映画評「ネクスト・ドリーム ふたりで叶える夢」

☆☆☆(6点/10点満点中)
2020年アメリカ=イギリス合作映画 監督ニーシャ・ガナトラ
ネタバレあり

このところ公開される音楽関係のドラマ映画に良いものが多い。傑作とは言えないまでも後味が良いものが目立つ。しかし、邦題サブタイトルの “ふたり” が誰を指すのか不明でござる。

大ベテランで暫くスタジオ・アルバムを出していない女性歌手トレイシー・エリス・ロスの付き人をする妙齢美人ダコタ・ジョンスンは音楽学校を出たプロデューサー志願。我儘なところもあるがなかなか気の良い雇い主の素晴らしさを最大限発揮させようと、空き時間にミキサーに指示を出してライブ音源のミックスを続けている。後日、本人に聞かせても好感触を得るが、二人の念願であるスタジオ・アルバム制作はレコード会社が関心を示さず流れてしまう。
 憂鬱な気分の中ダコタは、才能のありそうな黒人青年ケルヴィン・ハリスン・ジュニアを発見、音楽プロデューサーを騙って彼が作った曲をいじって信頼を得てトレイシーの舞台での前座として彼を使おうとするが、トレイシーを怒らせ、真相を打ち明けたハリスン君も怒らせる。
 かくして付き人を辞めてラジオのDJをする父親ビル・プルマンの許に舞い戻り、元雇い主とハリスン君に謝罪のメールを送る。
 暫くしてトレイシーが実家に彼女を訪れ、そこへ彼も現れる。“なんでママがここにいるの?”ということで発覚した二人の母子関係に一同びっくり。かくして全員の確執は全てチャラとなる。彼女は生まれる前のダコタとも関係があり、何と世界は狭いことよ! 
 小成功を収めたハリスン君は母親をゲスト歌手として呼び、共演する。

というお話は、ミュージシャンではなく、その付き人を主人公にしたところが新鮮で、その苦労話がなかなか興味をそそる。
 本作が楽しくなった理由には付き人の音楽的造形の深さがあり、彼女が手に取るレコードの数々やその言動で現在アメリカ人が評価するアメリカン・ポピュラー音楽の評価がよく解る。ジョニ・ミッチェルやブルース・スプリングスティーンは日本より遥かに高い評価を得ているし、サム・クックは神様のような扱い。イーグルスは日本に比べると今一つで、どん臭いという感じで受け取られているようである。これは実際【ローリング・ストーン】誌などの総評でも伺われる。

トレイシーが演ずるグレースのモデルはどうもシェールらしい。彼女の顔が時々シェールに見えました。で、トレイシーは大御所ダイアナ・ロスの娘で、大歌手の娘だから上手いとは限らないが、やはりお上手です。

作劇的にはかなり調子の良いもので、彼女が力を入れた二人が母子だったり、彼女が若い時にプルマンと会った時に彼の妻が妊娠していたのがダコタであったとか、往年のハリウッド喜劇の “イッツ・ア・スモール・ワールド” もの(?)のような扱いだが、欧州風に考えるとこれもまた運命論の映画である。

軽妙なお話なので、かかる作り物めいた流れも大した欠点とならず、寧ろ爽やかな後味を楽しむのが良い。とりあえず☆三つ(佳作未満)にしたものの、感じの良さを重視すれば佳作と言えないこともない。

映画も読書も他人から見ると苦行のように見える僕の趣味。音楽に関してはぐっと気楽に付き合っていると思う。音楽に詳しい複数の人が楽しそうに会話しているのを観ているとこちらも幸せな気分になる。昨日もビートルズ絡みで男女が語っている動画を観たが、専門的すぎて解らないところがあっても、実に楽しかった。

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