映画評「浅田家!」

☆☆☆★(7点/10点満点中)
2020年日本映画 監督・中野量太
ネタバレあり

東京新聞で3・11の後回収された写真を再生して被災者に返している人がいるというのを何度か読んだ。本作は、それに関わった若手写真家・浅田政志氏の人生をベースにした作品でござる。

映画は二段構えで、前半はその事業と全く関係なく、同氏(二宮和也)が写真家として自立するまでの道のりを面白可笑しく見せている。
 何が可笑しいかと言えば、父親(平田満)由来の、演出を伴う家族写真を色々と取り続けること。それがなかなか大掛かりで、例えば、市に頼み込んで消防車や小道具一式を借り、母親(風吹ジュン)や兄(妻夫木聡)を加えて、写真を撮るのである。馬鹿馬鹿しいが、ある意味涙ぐましい。それが最終的に可笑しみに昇華する。
 それを語るのが妻夫木聡の兄というのも、前半と後半とで違うお話を綴るという伏線となっている感じである。

後半ナレーションの類は殆どなくなるが、少しだけある語りは主人公の政志君である。
 幼馴染で将来の妻となる若菜(黒木華)の独断で開かれることになった個展は小成功で、結果的に小出版社を展開する女性により【浅田家】というタイトルの写真集として出版されることになる。当初全く売れなかった写真集は、しかし、写真界の芥川賞と言われる木村伊兵衛写真賞を受賞する(これによって売り上げは良くなったはずだ)。
 写真集の最後に記された【家族写真撮ります】というメッセージを読んだ岩手県の購入者から依頼が入って来る。ところが、この一家が程なく起こる3・11の被災者となった為、彼は一家を探しに岩手まで出かけ、写真を懸命に再生して被災者に返している小野君(菅田将暉)を見出す。
 小野君と主人公そして中年女性の美智子(渡辺真起子)は(実際には他のボランティアも少なからずいたはず)一致協力して8万枚もの写真を再生し、6万枚を返すのである。

返却事業に絡んで起こる諸々の家族的事件は多く家族関係を見せる為の創作と思うが、家族の愛情を様々な形で描いてきた中野量太監督らしい内容で、家族の情愛に弱い僕は当然の如く胸を打たれた。前半と後半とで二分される作り方で、それが相互に感応し合う感じになっているのも良い。

言わずもがなの落ちも待っていて、これが膝を打たせる。人情ものがお好きな方にお薦めします。

これを観るのは、朝だけ(浅田家)!よ。

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