映画評「プリズン・エスケープ 脱出への10の鍵」

☆☆★(5点/10点満点中)
2020年イギリス=オーストラリア=南ア=アメリカ=ドイツ合作映画 監督フランシス・アナン
ネタバレあり

脱走ものは場所によって収容所ものと刑務所ものに分れる。
 収容所ものの大傑作に「大脱走」(1963年)があり、刑務所ものでは「パピヨン」(1973年)「アルカトラズからの脱出」(1979年)や「ショーシャンクの空に」(1994年)が代表格。
 製作の目的は些か違う「抵抗(レジスタンス)」(1956年)というのもある。作品の性格は全然違うが、内容的には本作に案外近い。

実話ものである。

1978年の南ア。白人青年ティム・ジェンキン(ダニエル・ラドクリフ)とスティーヴン・リー(ダニエル・ウェバー)がアパルトヘイトへの抗議の為にパンフレットの爆弾散布をやって逮捕される。
 アパルトヘイト撤廃運動に勤しむANC(アフリカ国民会議)の為にもと早々の自由を目指して脱獄を企図するが、プレトリア刑務所に多数いる先輩の政治犯が消極的な中、フランス系のレオナール・フォンテーヌ(マーク・レナード・ウィンター)を仲間に加え、懲役の為に課された木工作業を利用して次々と木製の鍵を作り、夜中の実験を重ねて成功の確信を得ると、一年を過ぎた頃遂に実施に移す。

というお話。社会派としての目的は殆どなく、脱獄をどう実現するかを主眼に見せる内容は、その方法や小道具の具体性を比べても「アルカトラズからの脱出」に類する。

しかし、ピンチを迎える場面が多いがサスペンス醸成は必ずしも強力ではなく、とりわけ実施の段で見せる刑務所側の警備の緩さには些かがっかりさせられる。
 通常の脱走・脱獄ものでは物音一つに見ているこちらもぴくッとするのに、本作では最後のドアを破壊するのに大きな音をかなり長い間たてている。あれで誰も駆けつけない刑務所から他の者が脱走を試みなかったのが不思議なくらい。まあ、木で20個近い鍵を作るなどということなど平均的な囚人は考えないのだろう。パピヨン(本名アンリ・リシャエール)や「アルカトラズ」のフランク・モリスなら鼻で笑うにちがいない。

刑務官の人品の卑しさは結構出て来るが、刑務所内の苛酷さの描出は足りない。為に自由回復へのモチヴェーションを感じにくいという結果を生じている。

プレトリア刑務所はだらしないという内容。プレトリアは南アの首都(の一つ)だからこの刑務所は都会にあるわけだが、刑務所の外がそのまま市街というのは驚き。色々驚かされる刑務所でありました。

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