映画評「バルーン 奇蹟の脱出飛行」

☆☆☆(6点/10点満点中)
2018年ドイツ=フランス=アメリカ合作映画 監督ミヒャエル・ヘルビヒ
ネタバレあり

東ドイツから西ドイツへの脱出を描いたドイツ製映画では「トンネル」(2001年)がドラマ性もサスペンスも充実、超弩級と言っても良いくらいの秀作だった。最近観た「僕たちは希望という名の列車に乗った」は一種の青春映画として楽しめた。
 いずれも実話ベースのお話で、本作もその系譜にあるが、実はこのお話は1981年にアメリカ映画界が邦題「気球の8人」として作っているので、本国による事実上のリメイクということになる。しかし、気の抜けた出来栄えのアメリカ版よりは正統派のサスペンスとして一通り楽しめる出来栄え。余り映画を観ない人なら相当楽しめるように思う。

1979年。電気技師ペーター・シュトレルツィク(フリードリヒ・ミュッケ)とドリス(カロリーヌ・シュッヘ)の夫妻は、親友ギュンター・ヴェッツェル(ダフィット・クロス)とペトラ(アリシア・フォン・リットベルク)の夫妻と共に、それぞれ二人ずつの子供たちを連れて、気球による西ドイツへの脱出を考えている。
 実行直前になり8人は重量的に無理と判断し、ペーターの一家だけで敢行することになる。ところが、計器の故障もあって国境まで200メートルの地点で軟着陸する羽目に陥る。朝まで待ってこっそり家まで戻るが、壊れた気球を発見した当局が秘密警察(シュタージ)を使って実行者を特定すべく動き出し、徐々に一家に接近する。
 一家は外国の大使に匿って貰おうと一家を挙げて作戦を敢行するが、失敗に終わった為、再びギュンターと協力して気球を作ることを決心する。但し、今回は彼が兵役義務に応じるまでの6週間という短期間で完成しないといけない。これが固定のタイムリミットとして機能する
 その間にも警察はバルーンの材料を求めた店を探り、いよいよ特定できる寸前にまで来る。このシークエンスはサスペンスとして丁寧に作っていて、強烈でこそないが、じわじわと緊迫感を醸成する。こちらは、非固定的なタイムリミットである
 警察が二家族を特定した時、彼らは決行の日を迎え、各所に配置された検問を巧みに避けて現場に集合、いよいよ気球に乗り込む。

さあその首尾は?などと問うまでもない。邦題が全てを示しているのでござる。また、この類のお話は失敗すれば知られることなく終わるので、そこからも結果が見えているわけであります。

惜しむらくは、一番のハイライトたる決行当夜の場面のサスペンス醸成が弱い。よく言えばドイツ映画らしく即実的ではったりをかましていないわけだが、もう少し強力であれば★一つプラスできたデス。

香港をめぐる中国の圧力が凄まじい。僕は全体主義は大嫌いだ。右も左も全体主義になればお終い。その時には似た者同士だ。単なる王朝である北朝鮮は滅びるかもしれないが、ITを駆使する中国は難しいか。日本国憲法の緊急事態条項追加も、議員の任期延長くらいは構わないが、政府がそれに乗じて(もしくはかこつけて)強権を握り過ぎるのは困る。アメリカとの協力関係もあってナチスの真似はなかなか出来ないと思われる一方、将来真似をする輩が出て来ないとも限らない。

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