映画評「スペシャリスト」(1969年)

☆☆(4点/10点満点中)
1969年イタリア=フランス合作映画 監督セルジョ・コルブッチ
ネタバレあり

古い映画に関してWOWOWよりはマシだが、NHK-BSPも既に保存版作成済みのものばかりで本当につまらない。昔なら保存版はおろか鑑賞するかどうかも躊躇するような本作のような作品をこうして保存版にして観るのも、WOWOWがすっかりファミリー映画に傾倒して観たいオールド・ムービーが激減したからである。新作に期待しない映画ファンはこうして益々映画から遠ざかる。

愚痴はともかく、監督はズームをやたらに使うので嫌いなセルジュ・コルブッチ監督(もっとも60年代から70年代にかけてイタリア映画ではズームが多用された。コルブッチはその中で多めというのが実際)ではなく、シルヴィー・ヴァルタンの元夫でフレンチ・ロック界のスーパースター、ジョニー・アリデイが出演している為興味が湧いた。「アイドルを探せ」(1963年)が懐かしいですな(と言ってもリアル・タイムで観たわけではありません)。

作られたのはマカロニ・ウェスタンが落ち目になった1969年で、日本公開はもはや問題にされなくなった1972年である。事実僕は全く記憶にない。

お話は1964年のコルブッチの旧作「ミネソタ無頼」同様復讐譚で、似ているところが少なくない。

舞台はブラック・ストーンという町で、例によってメキシコ国境であろう。
 兄をリンチして殺した小金持ちたちに復讐する為アリデイが町に現れる。町の近くで山賊マリオ・アドルフの子分たちを早業で倒すと、四人組の与太者たちは彼を崇拝し、一部の町民はおべっかを使う。
 町の銀行で頭取を務めるのはアリデイの幼馴染フランソワーズ・ファビアンだが、実は彼女の姦計のせいで兄が死に至ったことが後で判明する。兄の汚名を晴らす一環でアリデイは保安官ガストーネ・モスキンを連れて兄の最期を知るらしいアドルフに談判に行く。アドルフは紙切れを寄越し、保安官を人質に、兄がフランソワーズに移送を頼まれ途中で盗んだ大金を探し出せ、と言う。

全体にミステリーがかったところのある作品で、この紙切れの切り方が場所を特定する鍵になっているところが少し面白い。疑問を残すので"少し”に留める。

何故か(!)アドルフの束縛から逃れた保安官に逮捕されてしまうアリデイからフランソワーズを経て大金を得たアドルフは、しかし、その金が贋金と知って激怒、町を襲う。彼女が仕掛けた睡眠薬のせいで保安官が寝込んでいる間に留置所から抜け出したアリデイは、気の良い保安官を殺した山賊たちを倒し悪女フランソワーズを殺す。漁夫の利を狙う与太者たちは豹変し、大金獲得の為にアリデイをやっつけようとする。

お話全体は型通りだが、細部がちと面白い。
 例えば、保安官は非暴力主義で、アリデイも一応は言うことを聞く。一応なのは町民たちがそれを厳守しているわけではないと予想し、ピストルを隠し持っていたりするからである。しかし、その為アリデイも保安官に一目置いてい、どこか喧嘩友達というか信頼関係を持つ好敵手つまりルパン三世と銭形警部のような関係が成立する辺りが微笑ましい。
 しかし、彼の非暴力主義は呆気ない最後を迎える。アドルフが無情にも頭を撃って射殺するのである。マカロニ・ウェスタンらしい残酷味と言えばそれまでだが、この設定であれば「夜の大捜査線」(1967年)のように、最後は友情を以って別れるといった変化球にしたのほうが後味が良い。コルブッチに後味の良さを求めるのは無粋なのだろうが。

与太者たちの存在意義がよく解らず、狂言回し若しくはギリシャ古典劇のコロス風に使うのかと思えばそういう風な様相は一向に見せず、それでは傍観者的な扱いとして機能するかと推測しても結局そうならず、幕切れで全くしようもないことをやった末にトンズラするだけなのだから締まりのないこと甚だしい。彼らの扱い次第ではもっと面白い作品になったかもしれないので、がっかりした。

僕が観たバージョンはフランス語版。従って、アリデイとフランソワーズの声は本物でござる。めでたしめでたし。

因みに、マリオ・アドルフ扮する山賊の名前はディアブロ。スペイン語で悪魔といった意味で、この手のお話ではアメリカ映画にもよく出て来る名前でござる。

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