映画評「セブン・チャンス」

☆☆☆☆(8点/10点満点中)
1925年アメリカ映画 監督バスター・キートン
ネタバレあり

映画ファンを自称するようになってさほど経たない1973年にチャールズ・チャップリンと共にバスター・キートンの作品がシリーズでリバイバルで公開され始めた。日本初公開の時は「キートンの栃麺棒」という、現在ではほぼ意味不明の邦題で公開された本作がその第一弾だったのはよく憶えている。
 しかし、チャップリンは一部観たものの、キートンは後年の衛星放送等の機会に譲ることになった。本作も30年近く前に初めて衛星放送で観た。それ以来の再鑑賞(多分)。

相棒T・ロイ・バーンズと企業を共同経営するキートン氏は資金繰りに行き詰って困っていると、弁護士スニッツ・エドワーズが訪れ彼の祖父が財産を全額譲ることにしたと言う。但し、27歳の誕生日の七時までに結婚していることという条件が付いている。以前から恋い慕っていたガールフレンドのルース・ドワイヤーにプロポーズするとすんなりOK。しかし、今日中に結婚するという理由がお金の為と知って彼女はへそを曲げる。
 仕方なくバーンズやエドワーズの発案で別の女性と結婚しようとするが、直球勝負では全て空振り。そこで新聞に700万ドルの相続という情報付きで広告を出すと、老若の女性が教会に駆けつけて来る。神父が呆れて “冗談だから帰れ” と言った言葉に女性たちは激怒、キートンを追いかけ始める。
 彼の真情を知ったルースのメモを読んだ彼は、バーンズに頼んで彼女の家に牧師を呼べと言って、女性たちから逃げ通す。さて、上手く彼女たちをまいて家に無事に辿り着くか。

というお話で、とにかく物凄い数の女性たちから逃げるキートンの、陸上十種競技選手も真っ青の活躍ぶりが物凄い。ジャッキー・チェンを引き合いに出す人が多いが、僕はジャン=ポール・ベルモンドのアクション映画諸作とりわけ「リオの男」(1964年)の原形をここに見出す。あの映画にも、上から落ちて来る物凄い量の石を避けつつ山をキートンが下る本作ハイライトに似た場面があったと思う。

開巻後40分の辺から始まる逃走シーンが圧巻というのは僕も大いに認めたい。同時に、それまでが退屈という意見には多少異論がある。序盤からそこまでは謂わばシチュエーション・コメディーの展開であって、その面白味を味わうべきである。特に、弁護士を督促のそれを勘違いして逃げ回り、相続を知らせる弁護士を知るや追い掛け回す、という変転は実に楽しいではないか。

知り合いの7人の女性たちに次々とアプローチするくだりは少々モタモタする感じがあるが、最後の一人がメモをちぎるのを見せる代わりに紙吹雪が上から落ちて来るだけにしたのは上手い。

1999年の「プロポーズ」は本作のリメイク。但し、近年の映画であること、スラップスティック・コメディーではないことから、主人公に結婚願望がなく、よりシチュエーション・コメディー的であったと記憶する。

あの落ちて来る大小様々の大量の岩石は張りぼてだろうが、結構重量感を感じさせる。なかなか大したものだ。それにしてもあの量。今ならCGでほいほいと作り出せるが、そんな便利なもののない時代、美術スタッフに頭が下がる。

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