映画評「弥生、三月-君を愛した30年-」

☆☆★(5点/10点満点中)
2020年日本映画 監督・遊川和彦
ネタバレあり

長きに渡るロマンスでござる。

スタートは1986年。正義感が強く押しの強い女子高生・波留は、血液の病気(血友病?)を患っている同級生・杉咲花と仲が良く、彼女の大好きなサッカー男子・成田凌との恋の成就に奔走するが、告白させる前に親友は死んでしまう。実は波留と成田は両想いらしい。
 1996年、彼は出来ちゃった結婚をするが、数年後出来たばかりのJリーグの選手を首になった後息子を庇って脚を負傷する。かくして妻とも離婚し子供も引き取られてすっかりダメ男になった彼の前に、高校時代の希望通り教師となり歯医者・小澤征悦と結婚した波留が訪れ、彼を息子と強引に会わせて親子の仲を回復させ、二人も感極まって男女の関係を結んでしまう。
 が、その日の午後に3・11の大震災が起き、小澤が亡くなる。罪悪感を覚えて教職を辞した彼女は姿を消し杳として行方不明となる。少年サッカーのコーチとして奮闘し始めた成田が彼女を必死に探し、遂に東京の高田馬場に発見する。その第一の目的は花ちゃんが残した結婚式用に録音したカセットテープを渡すこと。このテープを聞いた波留は持ち前の強きを発揮、成田に伴い、正義感を発揮した結果教師としてピンチを迎えた成田の息子・岡田健史の謝罪会に乗り込む。二人に未来は開けたようである。

かなり作り物めいたお話で、良いところもあるが、良くないところも多い。お話としては高校時代までが良い。画面もその部分のほうが良い。

繰り返しが実に多い作品で、波留と成田がそれぞれバスを追いかける場面が三回ずつある。波留はバスを止めることができ、成田は逃げられる、という対照が効果的。これは良い。
 一方、花ちゃん(役名さくら)の墓のある墓地で波留と成田がそれぞれ相手を避けて隠れる繰り返しは良からず、彼女が好きだった “見上げてごらん夜の星を” の使い方もくどくて押し付けがましく、やり過ぎ。その結果が既に述べたように作り物めいたというマイナス印象である。

波留が目標にしていたヘレン・ケラーのサリヴァン先生絡みのエピソードも多いが、高田馬場の古本屋で、「奇跡の人」の本を除けるとその隙間から波留の顔が見えるというところは予想通りながらも楽しい。

潜在力があっただけに惜しい作品と言うべし。

この題名は、若き井上陽水の傑作アルバム『氷の世界』に収められた「桜三月散歩道」という名曲を思い出させます。

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