映画評「30年後の同窓会」

☆☆☆★(7点/10点満点中)
2017年アメリカ映画 監督リチャード・リンクレイター
ネタバレあり

ダリル・ポニックサン(ポニックさんではない)が「さらば冬のかもめ」の続編(もしくは姉妹編)として書いた小説をリチャード・リンクレイターが映画化。ポニックサンとリンクレイターが共同で脚色に当たっている。

今世紀頭のイラク戦争最中のお話。
 イラクで息子に戦死された初老男性ラリー(スティーヴ・カレル)が、バーを経営するベトナム戦争時代の戦友サル(ブライアン・クランストン)を訪れ、彼を伴って、牧師となっているもう一人の戦友ミューラー(ローレンス・フィッシュバーン)に声をかける。二人に遺体引き取りに同行して貰いたいと言うのである。
 三人には共通するベトナム戦争時代に体験した苦い思い出がある。ラリーはその為に服役したことがあり、ミューラーは同行を躊躇する。
 結局三人で基地まで赴くが、息子の“戦死”の真相を戦友のワシントン(J・クイントン・ジョンスン)から聞かされたラリーは、嘘をつく国に反感を覚え、自分で遺体を運ぶこと、儀仗服での葬儀はしないことを宣言する。
 結局ワシントンに同行させて列車で運ぶのだが、途中で列車に置いてきぼりをくらった彼らは三人ともその死に罪悪感を覚える戦友の母親(シシリー・タイスン)を訪れる。モルヒネがなく戦友が苦しんで死んでいったという真相を告げることができなかった三人は、地元ではあるものの、結局軍式に則った方法で葬儀を終える。
 ラリーが戦友宅で味わった体験により思うところがあったようで考えを変えたわけだが、ワシントンから渡された息子の遺書には “軍服で葬儀をしてほしい” とある。ラリーの変心は正解だったのだ。

戦争を描く時、どんな映画も個人対国家の関係を見つめることが避けられない。特に、厭戦・反戦的な作品はそれが中心テーマとなるが、本作でも、基地に着いて以降はそれが紛うことなき主題となる。国家が引き起こした戦争が個人を著しく阻害する様子を我々は沈鬱な気持ちで見るしかなくなる。

自分達の過去の罪悪感と、戦争の大義名分とそれを指導する国家への嫌悪感とが絡み合って三人はいたく沈み込む。そんな彼らも戦友宅で嘘をつかざるを得なくなり、同じような嘘をついた国家に対し多少歩み寄る。
 勿論、個人の利他的な嘘と国家の国民に苦痛を強いるインチキとは同列に語れないものの、これがアメリカの現状・・・と諦観的に認めざるを得ないのは、三人だけでなく、リンクレイターたちも同様である。75年間戦争をしていない日本人には、愛国心にからめられている彼らの葛藤は想像しにくい。

いずれにしても、反国家的態度は透徹できず、なまなかになった恨みはあるが、個人と国家の関係を見つめる時、だからこそ理想論に終らなかったこの映画は深いのだと言えないこともないと思うのだ。

スティーヴ・カレル好演。

基地から墓地へ。漢字が似ていて瞬間的に読めないでしょう?(笑) 「さらば冬のかもめ」の原題は The Last Details でこちらが Last Flag Flying と関連作品らしく Last で揃えている。

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