映画評「デリート・ヒストリー」

☆☆★(5点/10点満点中)
2020年フランス=ベルギー合作映画 監督ブノワ・ドレピーヌ、ギュスターヴ・ケルヴェン
ネタバレあり

昨日の「タッチ・ミー・ノット」のベルリン映画祭金熊賞受賞同様、本作の銀熊賞も相当疑問である。近年欧州映画祭は映画としての完成度よりテーマ性を重視しすぎているのではないか。

フランス。働いたことない主婦ブランシュ・ガールディン(ガールダン?)が離婚した夫に息子シルヴァンを奪われて落胆、酔って若い男としけこむ。が、相手の男が動画に撮って1万フラン寄こせと脅迫してくる。
 娘の不都合な動画をアップされたカードローン地獄に陥っている修理屋ドニ・ポダリデスは、アップした同級生からスマホを取り上げる。
 彼を乗せた個人タクシーの女性運転手コリンヌ・マシエロはネット上の評価が★一つと最低なのを何とかアップさせたいと思っている。
 この三人が意気投合してGAFA即ちITプラットフォームに反旗を翻し、ブランシュはアメリカのデータセンターへ、コリンヌは管理会社へ、ポダリデスはアイルランドのデータセンターへ乗り込む。
 しかし、ポダリデスはアイルランドに赴く代りに自分の話す相手がAIとも気づかずにモーリシャスまで会いに出かけ、正体を知って悄然、スマホを海に投げ込む。ブランシュが心配していた動画(実は単なるコスチューム遊びと判明)を見た息子は母親が偉人と勘違いし絆を築き、それを喜んだ彼女は息子に糸電話を進呈する。その糸電話で二人の女性は何故かモーリシャスにいるポダリデスと会話する。

というIT時代、なかんずくスマホに人々が翻弄される社会を風刺したコメディーで、下卑ていない見せ方に好感を覚えるが、後半ドタバタが過ぎて洒落っ気が足りず、全体としては他愛ないお笑いという印象に終わる。

その目的を如何に作品として結実させるかによって映画は評価されるべきで、目的意識が高いだけに映画が終わっては困る。多少変わったアングルで社会問題を扱ったくらいで安易に高い評価を与えては若い人の映画鑑賞眼も育たない。

平均値を下回る5.8という投票結果(加重平均得点)を成したIMDbの一般人の映画観のほうが正しい。現在の欧米映画界は余りにポリ・コレ的に偏っている。ある意味映画界の危機と言っても良い。

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