映画評「残酷・異常・虐待物語 元禄女系図」

☆(2点/10点満点中)
1969年日本映画 監督・石井輝男
ネタバレあり

東映エログロ映画特集第二弾。本作を見ると、昨日の作品が相当大人しく感じられる。こういう慣れは良し悪しなのでござる。刺激に慣れると碌なことはない。石井輝男監督、やり過ぎですよ。

医者の玄達(吉田輝雄)が見聞する、或いは狂言回しとして紹介される三つのエピソードにより構成される事実上のオムニバス映画。

最初は、やくざな男(山本豊三)に騙されて廓に沈んだ娘(橘ますみ)が、男を思って廓を抜け出した結果、主人一味にリンチされる。男が死んだ後、子供を設けていた娘は玄達の前で息絶える、という悲劇。

第二話では、醜い男に虐げられた時に味わった快感が忘れられない商家の娘(葵美津子)が、異形の男に責めさせた後その男をとっちめるという屈折した性格を見せる。
 第一話が旧時代の型通りの悲劇であるのに対し、第二話は近代的な精神分析が必要なようで、江戸時代の医師には些か荷が重すぎる症状のお話につき一応興味深い。
 結局、お嬢さんを思う余り自分の顔をこてで傷つけた後、相手も同じようにしようとして殺してしまう。という、部分的に谷崎潤一郎「春琴抄」に似たところがある純サド・マゾ譚。

しかし、ここまでが前菜に見えるほど第三話が凄まじいのである。

残忍にも程がある城主(小池朝雄)が嫉妬に狂いお方様(賀川雪絵)を「007/ゴールドフィンガー」(1964年)よろしく金粉責めにする。窒息死(実際には、全身に金粉を塗っても死ぬことないと言われている)する前に彼女は“世にも珍しいものを見せる”と交換条件を出して助けてもらう。
 半年後玄達を侍らせた席で、お方様は現在最も愛されている側室(尾花ミキ)が ”実は城主の実の娘で、しかも妊娠している” と城主に告げ、 “腹を切開させたら面白いのではないか”と玄達を誘う。
 城主はこれに怒ってお方様を殺すも、生まれ持った残虐趣味に抗しきれない。玄達が人道上の理由で応じないので自ら刀で切りかける。かくして半死の状態になったので、玄達はオランダの医学書にある帝王切開を実現したく、自ら執刀する。側室は死に、城は狂気に陥った城主を飲み込んで焼失、玄達は赤ん坊を手に同地を後にする。

金粉ショー以前にも異常なまでに残虐趣向の場面が幾つかあり、作者の変態趣味に苦言を呈したくなる。タイトルに偽りなしとは思う。

グロであるのは間違いないが、エロかどうかは責任は持てず。エロは性=生に繋がるので必ずしも下卑たこととは思わないが、東映ポルノのように劣情にのみ訴えようとするものを “映画” ということには抵抗がある。かと言って余り説教臭く作るのもおためごかしに感じられてプラスに働かない。
 この類は同じ時代のイタリアのローマ帝国ものなどにもあったが、後学の為に観る以外の価値はない、と言わざるを得ない。

フランスで五月革命が起きた1968年、ヘイズ・コードを撤廃したアメリカでニュー・シネマが本格的に始動、日本ではメジャー映画が初めてポルノ映画を作った。世界の映画界が変わろうとしていた。軌を一にした現象なのか、偶然なのか、連鎖反応なのか、解らないが。その結果、日米のスター・システムの崩壊が本格化する。

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