映画評「一度死んでみた」

☆☆★(5点/10点満点中)
2020年日本映画 監督・浜崎慎治
ネタバレあり

見るだけで元気が出そうな広瀬すずが出るので、一度観てみた。実にくだらないが、くだらないから映画的な価値がないなんてことはない。そんな狭い料簡で映画を観ている輩は自分が損をしていることに気づかないのだ。

アウトラインは非常に簡単。

若返り薬の開発がかなりうまく行っている製薬会社を、大手製薬会社の社長・嶋田久作が乗っ取ろうとしている。最大の目的は若返り薬の技術を得る為だ。内通者がいることに気づいた小製薬会社の社長・堤真一が犯人を突き止めるべく、若返り薬開発過程でできた二日間死ねる薬を飲む。
 ところが、内通者の秘書・小澤征悦が嶋田と組んで、丁度二日後より2時間前に社長の死体を焼いてしまおうと告別式なしとする。
 そうはさせじと、父親に反発してデスメタル・バンドでボーカルを務めている娘すずちゃんが、彼女の監視役・吉沢亮と力を合わせて、時間稼ぎの告別式を行おうと色々と策を講ずるのである。

眼目は、乗っ取り阻止と言おうか、遺体焼却阻止を巡るサスペンスであるが、その過程で不良気取りの娘が父親の真情に気づく、という親子和解の人情を浮かび上がらせていく。

死体をめぐるお笑いだからブラック・コメディーの色彩も滲むわけだが、余りに直接的でくすっと笑わせる感じには程遠いので、この要素はうまく消化されているとは言い難い。

細部は上手く行っているところとそうでないところが半々で、パスワード解読の部分は人情とよく絡み合っているし、“じいさん”と呼ばれる藤井社員(松田翔太)もギミックとしてよく機能している。
 反面、ヒロインや存在感のない吉沢亮の性格造形に絡む笑いは過剰で煩い。

もっと細かいところでは、焼却炉は一般の人が自由にできないと思いまする。

三途の川のところで「モルダウ」が、別の場面で「ドナウ川のさざなみ」が、斎場で「ツァラトゥストラはかく語りき」が流れるという、クラシックの名曲を使った茶目っ気が良い。
 クリスマス・イヴにライチャス・ブラザーズ「アンチェインド・メロディー」 Unchained Melodyがかかるのは「ゴースト/ニューヨークの幻」のパロディー。若い人にはちと解らないかもしれない。
 終盤の若返りに関するヒロインの台詞はビーチ・ボーイズ「素敵じゃないか」Wouldn't It Be Niceを意識しているような気もする。

広瀬すずの歌は僕には及第点。前半の歌に感情がこもっていないのはそういう設定だから。ロック的にはああいうヘタウマは魅力だ。
 最近のカラオケ・マシーンは細部を色々と計測して採点を出すそうであるが、そういうのに頼ると歌の上手さについて大いに勘違いする。それは “上手さ” ではなく “巧さ” に過ぎないだろう。カラオケに20年も行っていない僕は、仕組みがよく解らないが、バイブレーションやしゃくりをやればやるほど点が増えるのであれば、問題。例えば、一番と二番の同じ箇所でしゃくりを出し入れするほうが歌としての完成度は高いはずである。

この映画を観た後、やたらに“デス”を使いたくなったデス。

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