映画評「マザーレス・ブルックリン」

☆☆☆☆(8点/10点満点中)
2018年アメリカ映画 監督エドワード・ノートン
ネタバレあり

ジョナサン・レセムの同名小説を脚本・主演も兼ねてエドワード・ノートンが映画化したハードボイルド映画である。小説も映画も、特に日本では相対的に人気のないジャンルで、好きな人は好きだが、昔から実力ほどの評価をされることがどうも少ない。僕も少年時代は本格ミステリーに比べて退屈感が先行したが、ある年齢以降はそうでもなくなった。

ブルックリンで探偵事務所を経営するフランク(ブルース・ウィリス)が、部下のライオネル(ノートン)らの前で、男たちに拉致され、結果的に殺される。新体制で再開した事務所の一員として、ライオネルは、思わず悪口雑言を言ってしまうトゥレット症候群に苦しめられながら、フランクの残したヒントから抜群の記憶力を頼りに捜査を続け、他の探偵の協力を得て、肌の色の白い黒人女性ローラ(ググ・ンバータ=ロー)に辿り着く。
 ジャズ・クラブ経営者の娘である彼女がブルックリンにおける都市開発反対運動に参画していることから、関係する集会やクラブに出入りするうち、土地開発推進側から幾度か暴力を振るわれるものの、市長を動かすことすら出来る影の実力者モーゼス(アレック・ボールドウィン)の個人的事情を把握する。

レセムの原作は時代背景が現在(書かれた1990年代)で都市開発も絡まず、本作は主人公の人物造形だけを戴いたと聞く。それを考えると、脚本も書いたノートンは、ダム建設をめぐる対立と実力者の個人的事情をテーマにしたハードボイルド映画の古典「チャイナタウン」(1973年)を参考にしたのではないかと思う。
 しかし、序盤の些かややこしい印象に反して、同作よりも単純な図式で、終盤は主人公が弱い立場のローラを守る立場になり、ハードボイルドものらしく潜在的にロマンティシズムが強く漂い(やや甘すぎる感あるも)なかなかゴキゲン。

ハードボイルド映画には欠かせない(?)酒場それもジャズ・クラブが重要な舞台につき必然的に出て来る実際音としてのジャズ、あるいは背景音楽としてのジャズ(ディジー・ガレスピー、チャーリー・パーカーによる「リラクシング・ウィズ・リー」など)がもたらすムードも、ハードボイルド好きならたまらないはず。

ややデリケートな問題を含むので叱られるかもしれないが、主人公のトゥレット症候群による突発的な悪口(あっこう)が殆ど彼の正直な意見である為に可笑しくてたまらない。それを一々謝る彼の人物像も魅力的で、総合的に楽しめる映画に仕上がっている。
 個人的には核心に迫っていくプロセスも面白く、やや長いのでやむを得ないところがあると思いつつ、やはり現状の世評は低すぎるという印象が否めない。

昔映画館で観たイーストウッド監督「バード」の良さも、チャーリー・パーカーをある程度聞いた今では解るかもしれない。

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