映画評「テリー・ギリアムのドン・キホーテ」

☆☆☆(6点/10点満点中)
2018年スペイン=ベルギー=フランス=イギリス=ポルトガル合作映画 監督テリー・ギリアム
ネタバレあり

テリー・ギリアムが彼なりの「ドン・キホーテ」を作ろうとして何度も挫折したのは有名で、最初の挫折については「ロスト・イン・ラ・マンチャ」(2002年)というドキュメンタリー映画にもなったくらい。その後何度もトライして、遂に完成したらしい。めでたいことです。

これが所期通りの内容なのか、「ロスト・イン・ラ・マンチャ」の内容も忘れた今では不明だが、もしそうであれば【幽霊の正体見たり枯れ尾花】若しくは【大山鳴動して鼠一匹】的な印象でござる。

今の若い人は「ドン・キホーテ」のお話も知らないと思うので軽く紹介すると、現実と幻想の区別が付かなくなって冒険の旅を続ける郷士キホーテが主人公、従者がサンチョ・パンサ、夢に見るマドンナがドルシネア姫で、風車を巨人と思って攻撃していくエピソードが有名。16-17世紀の小説の例に洩れず悪漢小説の体裁を採用しているわけで、この映画も悪漢小説風にエピソードを羅列していく。

ミュージカルの「ラ・マンチャの男」(1972年)も大して面白くなかったように、この現在にドン・キホーテのお話を綴ってもそれほど面白くないと思う。原作にあるメタフィクションの感覚が発揮にしにくいせいかもしれない。
 勿論本作はストレートな「ドン・キホーテ」の映画化ではなく、自身の映画製作の苦労を重ねつつ、移民問題など現代社会を斜めから見たようなところのある瘋癲(ふうてん)劇になっている。以下暫し本作のストーリーをば。

スペインで「ドン・キホーテ」をベースにしたCMを作ろうとしているCM監督アダム・ドライヴァーが行き詰まった挙句、ジプシーに自分の卒業製作映画を売りつけられる。雇用者ステラン・スカルスガルドの妻オルガ・キュリレンコと懇ろにしているところを見つけられそうになり慌てて逃げ出した翌朝、以前撮影したロケ地へ向かうと、彼が抜擢した靴職人ジョナサン・プライスが自分をすっかりドン・キホーテと思い込んでいるのに遭遇、警察といざこざの末に警官が一人亡くなった為、ドライヴァーは従者サンチョとしてドン・キホーテのプライスと一緒に逃げる。
 プライスが風車に向った後助けたつもりの肥った村娘の住む村に着く。そこはムスリムの村で、ドライヴァーはテロリストの集団と思い込むが、実は素朴な不法移民の単なるコミュニティである。
 村を離れたドライヴァーは、かつて映画に出演させた村娘ジョアナ・ヒベイロと遭遇し、再会したオルガに招かれ、スカルスガルドの城で行われる仮装パーティーに参加。ジョアナをめぐるいざこざが本(もと)で、プライスは階上から落下して死ぬが、死の直前に正気に返る。
 彼女を連れて城を出たドライヴァー氏は、突然風車に巨人の幻想を見て襲撃する。旅の道連れがすっかりドン・キホーテのつもりにいるのに気づいたジョアナは自らサンチョを任じて旅に同行する。

お話の肝は、ドン・キホーテが引き継がれていくという幕切れで、意外性を狙ったのであろうが、途中から靴職人の幻想にCM監督が感化されていく感じが漂うとは言え、唐突感があり余りピンと来ない。きちんとした段取り(布石)を採るか意外性を採るか微妙なところではあるが。

☆☆★と☆☆☆の間で迷うが、完成へのご祝儀も入れて☆☆☆とする。

ドン・キホーテという店があるが、ドンキ・ホーテと思っている輩がいる。キリマンジャロはキリマ・ンジャロが正しい切り方。

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