映画評「ベン・イズ・バック」

☆☆★(5点/10点満点中)
2018年アメリカ映画 監督ピーター・ヘッジズ
ネタバレあり

告発映画としてきちんとしているが、映画としては潤いが不足気味で積極的には評価できない。一応お話をば。

クリスマス・イヴの日、薬物更生施設から若者ベン(ルーカス・ヘッジズ)が、母ホリー(ジュリア・ロバーツ)、妹アイヴィー(キャスリン・ニュートン)、後添いの夫ニール(コートニー・B・ヴィンス)、その子供達の賑やかに暮らす家に一日限定で戻って来る。
 実は母親が招いたものだが、アイヴィーもニールも大反対。それでもホリーが徹底して監視することで一日だけ居ることを認められる。ところが、家族を挙げてクリスマスの催しに出かけた後、家に戻ってみると愛犬がいない。義父に責められたベンは犬を探しに出、ホリーも一人にさせまいと付いていく。
 ベンはホリーの隙をついて犯人と決めつけたディーラーのボスのところへ車で向かう。ホリーは探すに難儀して絶望的になっているところへ、一仕事を終えて犬を取り戻した彼が車の窓に残したメモを読んだ通行人から電話を受ける。
 彼女は車から飛び出した愛犬に導かれて廃屋に入り、倒れている息子を発見、彼に恨みがある筈の被害者の母親から貰った蘇生薬を彼に注入する。

主題の第一は、鎮痛剤による中毒・中毒死の問題を告発することである。さすがにそれでは映画にならないことを脚本も書いている監督ピーター・ヘッジズは知っていて、お話の進展のうちに母親の愛情を浮き彫りにするという第二の主題を加え、きちんと構成している。犬の使い方がさりげなく上手く、お話の流れが似たような感じがしないでもない昨日の「ボクは坊さん。」の終幕に比べて上等である。

表面だけ捉えて親バカとかくず息子といった人物批判を感想文として書いている人がいるが、そういうのを甘ったれた人間観と言う。他人を客観性をもって見ることができ、人間は愚かであり人生には厳しさがあると知っている人はそんなバカは言わない。映画観としてもなっていない。
 とにかく、ホリーは子供に甘いが、放っておいたら死ぬしかない状態である以上責めることはできない。ベンにも甘ったれたところがあるが、病気で中毒性のある鎮痛剤を打たれたのは本人の責任ではない。だから、あの元担当医が出て来る場面があるのである。観客が医師であれば“そう言われても”という感想になるだろうが、だからこそ人間を超えた告発ものとなる。

とにかく、二人は互いに依存している関係にある。息子は麻薬だけでなく母親にも依存している、という設定が文学的である。タイトルは、“ベンが家に戻った”と“ベンが蘇生した”という意味の掛詞。それを最初と最後とで照応させたのは作劇的に巧い。それがきちんとした映画と言った所以であるが、全体としては生々し過ぎる印象が強く、少なくとも僕の好きなタイプではない。

ある程度落ち着いてきたと思ったので、少額ながらUSリート(米国不動産関連債券)を買った。しかし、まだまだであった(泣)。リーマン・ショックと違って騒動が終れば一気に回復するのが解り切っているので、そう長期戦にならないと思うが、待つしかない。

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