映画評「カサノバ」

☆☆☆☆(8点/10点満点中)
1976年イタリア映画 監督フェデリコ・フェリーニ
ネタバレあり

“ブルーレイ消滅危惧作品”シリーズその3。

何年か前、色事師として有名なジャコモ・カザノヴァの長い「回想録」を(図書館にある)岸田国士訳で読もうと思ったが、訳者の急死で未完結と知り、ごく一部の抄訳で済ませた。完全版も出版されているものの、お金を出してまで読むかは微妙なところ。年金の額次第では将来検討しても良い。

ずっと自伝的な作品を作り続けて来たフェデリコ・フェリーニ監督が久々に純然たるドラマに挑戦した作品で、当時映画館で観た。あの時代ベテラン映画批評家の間で絶対視されてきたフェリーニの作品としては評価が伸び悩んだ印象があるが、僕と高校時代からの親友K君とはなかなか面白いということで意見が一致したのだった。

完全な回想録を読んでいないので何とも言えないが、それに則っているところが多いのではないか・・・という気がするのは、18世紀当時まだ信じられていた錬金術など色事師以外の面も出て来るからである。

生れたイタリアから始まり、フランス、イギリス、スイス等と漁色の旅を続ける内容で、出て来る女性陣が現代の感覚では美人とは言いかねる人が大半なのでエロ気を期待すると当てが外れよう。登場人物は男も女も妙な化粧を施し、旧作「サテリコン」同様グロテスクと言いたくなる程だが、フェリーニの趣味が多分に入っているとは言え、18世紀上流社会ではまだあのような青白く顔を塗りたくるなどの化粧をしていたのは事実である。

化粧だけでなく体型を整えるコルセットをしているカサノヴァの実態は、ある時期から漁色と言っても楽しむ為というより、もはや強迫観念的に行っていたような気さえ起こさせる。そんな彼を慰めてくれるのが最後の夢にも出て来るからくり人形で、色事師としての評判も文字通り空しい、憐憫のような感情を観客に起こさせるのがフェリーニの目的だったのではないか。

セットは豪華で、大きなビニール・シートを使った海の表現などいつものフェリーニらしい造形的な見せ方で、その他覗き穴のある修道院など美術班の頑張りが半端ではない。フェリーニの世界は常に猥雑至極であるが、単に雑然としているわけではなく、その中に統一感がある。見事と思う。

カザノヴァ(日本語ではカサノヴァ、カサノバと言うことが多いが、本作のイタリア語を聞いているとカザノヴァと発音している)に扮するドナルド・サザーランドの貢献度も高い。本作の中ではティナ・オーモンが綺麗に見えました。

幽霊の正体見たり枯れ尾花。

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