映画評「こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話」

☆☆★(5点/10点満点中)
2018年日本映画 監督・前田哲
ネタバレあり

この映画の何が悪いかと言えば、“愛しき実話”というサブタイトルである。多くの方がそうした場合製作関係者、洋画の場合は配給会社を責めるが、実際には日本の観客にこそ問題がある。日本人は題名に内容、それも情緒的なものを求めすぎる。洋画では何と散文的な、内容を直接的に示さない題名(原題)の何と多いことか。
 実話への傾倒について。観客が実話を求め、安易千万なことに実話という事実に感動してしまうから、それに抵抗する気骨のない関係者が、こんな直截なサブタイトルをつけてしまう。実話と言ってもフィクション性は高いし、フィクションも実際の生活感情に基づいて作られているのだから、両者を差別する人の気持ちが解らない。 

それはさておき、本作は、2002年に筋ジストロフィーで亡くなった札幌在住の鹿野靖明という人に取材した、ジャーナリスト渡部一史のノンフィクションを映画化したものである。

主たる内容は、暴言吐き放題の主人公鹿野(大泉洋)が十代半ばで死ぬと言われながら、ボランティアとの格闘を通じて自らを強め、41歳まで生きた記録である。

本作で異色なのは、難病ものとは思えない主人公の我儘な言動で、それを象徴するのが題名。一部にこの身勝手さに不快感を示す人がいるが、彼が何故ボランティアに好き勝手を言うのか、その理由をまず理解しなければならない。
 一見我儘でボランティアを軽視しているようであるが、彼はそれにより自分を可哀想な患者と見てもらうことを極力避けようとしていたわけで、それがないと介護ボランティアは対象者に対して対等な立場を取り得ないという判断だったのだろう。いずれにしても、この手の映画としては新鮮であった。

原作となったノンフィクションを読まないと確かなことは言えないが、恐らく彼が恋する非ボランティア志願のインチキ女子大生美咲(高畑充希)と彼女を結果的にボランティアにならしめてしまう恋人の北大医学部学生・田中(三浦春馬)の細かい挿話は創作であろうと推測する。このノンフィクションにボランティアの私生活は本来関係ないからである。
 彼らは鹿野の“自分に正直に生きる”生き方を映す鏡として登場し、それを自分のうちに吸収し、自分に正直に生きる医者、先生、夫婦になっていく。脚本家(橋本裕志)の腕の見せ所だ。

監督は「ブタがいた教室」「猿ロック The Movie」を見たことのある前田哲。実話の映画化ということで、セミ・ドキュメンタリー「ブタがいた教室」のほうに近い。場面転換にフェード・アウトを使っている為主人公の個性の強さに反して印象は柔らかめで、残念ながら、このところ見て来た他の邦画(群)同様、水準的な印象に留まる。

こんな夜更けに野球かよ。夜は更けませんでした(午後11時半頃確認)が、台湾がベネズエラに勝ったことで2勝目を挙げていた侍ジャパンがプレミア12のスーパーラウンドに進出決定。たった3試合で終わるわけにはいかぬ。ラグビーも面白かったけれど、野球も良いね。

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