映画評「カメラを止めるな!」

☆☆☆☆(8点/10点満点中)
2017年日本映画 監督・上田慎一郎
ネタバレあり

昨年の秋に話題になったインディ作品。地上波放送(日本テレビ)だが、スタジオジブリ作品同様に完全ノーカット(CMによる中断はある)なので観る。詳細は後述するが、これはアイデアの勝利だ。

再現ドラマなどの演出を担当している濱津隆之が、TVのプロデューサーたちに頼まれて、生放送によるワン・カットのTVゾンビ映画を作る羽目になる。
 映画に詳しい人なら勿論、詳しくない人でも、それがどんなに大変なことが解るであろう。ましてSFXが必要なジャンルである。ワン・カットだけなら取り直しが利くからまだ良いが、生放送はきつい。演劇では当たり前のことでもカメラが追うTVではまた事情が違う。
 
とにかく37分間のワン・カット放送は“無事に”終わる。ところが、1ヶ月前に遡り、やがて本番を迎えての楽屋裏が凄まじく、実はアドリブと即興的な知恵の奔出の連続により綱渡りで放送が続けられていたのである。

という次第で撮影の大変なことがよく伝わってくる一方、その綱渡りぶりでゲラゲラ笑わせる内容になっている。下ネタを繰り出さなくても可笑しい映画は出来ることがよく解る。
 このネタ明かしの中でも、監督が“カメラを止めるな!”と言うのは脚本にあった台詞ではなく、実際のスタッフに向けて言ったと(観客に)判る箇所には感動さえあると言って良い。

全体における注目点は、映画を作っている様子を描く映画を撮っているという三重構造の面白さと、37分のワン・カットを実際に見せる興味である。楽屋裏の場面は極めて演劇的であるが、演劇でこれをやったとしてもワン・カット撮影の超絶技巧ぶりは何も伝わらない。つまり、本作は撮影そのものをもって実践的に映画について語る映画に仕立てられているのが興味深く、カメラマンに扮する男優役の男優(ややこしいですな)は本当に転んだのだと以前TVに出演した上田慎一郎監督が話すのを聞いたことがある。

最後は濱津隆之の監督、昔取った杵柄で事故を起こした女優のピンチヒッターとなる妻(しゅはまはるみ)、監督志望の娘(真魚)が一家を挙げて大活躍することで家族の絆が深まる感じが出て来たり、当初はアンサンブルが全く取れていなかったキャスト・スタッフが一致団結して作品を作り上げていく様子が少なからぬ感動をもたらす。300万円ほどの製作費で、30億円稼いだだけのことは十分ある。

お金をかけて面白い映画も良いが、お金をかけずに面白くなればもっと良いであろう。お金をかけているのに愚にも付かない作品とお金をかけず愚にもつかない作品ではどちらがまずいか判断が難しい。

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