映画評「シチズンフォー スノーデンの暴露」

☆☆☆☆★(9点/10点満点中)
2014年アメリカ=ドイツ=イギリス合作映画 監督ローラ・ポイトラス
ネタバレあり

スノーデンは当初日本では完全に犯罪者扱いされた。かのリベラル(自由主義的)な「報道ステーション」でさえそうであった。1年後くらいにキャスターの古舘伊知郎氏が「我々は容疑者と呼んでいましたが、考え直さなければいけないのかもしれません」といった主旨のコメントをしていたのが印象に残っている。

本作は、彼が2013年に高級職員として働いていたNSA(アメリカ国家安全保障局)から情報を持ち出し、香港で本作の監督であるローラ・ポイトラスと「シチズンフォー」のコードネームでの通信を開始した後、英国ガーディアン紙の記者などを交えて、【愛国者法】の名の下にアメリカに住んでいる人たちの全通信が特別なシステムによりチェックされていることを証言し、2014年にモスクワに逃げるまでの様子を綴ったものである。

アカデミー長編ドキュメンタリー映画賞を受賞した本作は13か月前に本邦で公開されたが、能天気なわが国民は対岸の火事として捉え、さして話題にもならなかった模様である。劇映画の「スノーデン」が公開されて僅かに再注目されたようだが、我が国で所謂“共謀罪”法が成立し、施行される当日に放送するとはWOWOWさんも考えている。

結局今回の“共謀罪”法は日本版愛国者法で、プライバシーが著しく阻害される社会が訪れる可能性が高い。スノーデンが言うには、アメリカはメールその他のデジタル通信を総チェックできるシステムを日本に提供していて、米国当局もそれを認めている。日本政府だけが認めていないが、現政権の目標は“共謀罪”法によりこれを有効に使いたいということだろう。
 政権の“共謀罪”法成立の狙いは一般市民のデモ等への参加の抑制、法務省や前身が特高(思想犯に特化した特別高等警察)とされる公安警察の狙いは活動家の取り締まりのしやすさと思うが、一般市民は怖がって自制的になる可能性が高い一方、プロはこの法律に却って刺激されてデモだけでもやばいならいっそのこと実行しちゃえとテロに走るかもしれない。そうなったら逆効果だ。

この法律に関してはこの百倍くらい言いたいことがあるが、映画ブログなので、この辺にしておく。

本作は、我が国の将来を示していると思って間違いない。アメリカと違ってまだ始まったばかりなので、国家を監視するチャンスはあるが、国家権力がこの法律を使ってそれを妨害する可能性もあるわけで、三権分立が形だけで司法が特に弱いわが国だけに、かなり心配になる。破られて良いプライバシーもあるが、何もかも破られたら不自由すぎる。

CIA(スノーデンは事実上のCIAのスパイでもあり、日本の基地にもいた)が居場所を掴めば暗殺さえしたかもしれないと思うと、スノーデン及び彼の話を聞いたグレン・グリーンワルド以下のジャーナリスト、そして本作を作った監督以下の制作関係者には頭が下がる。アメリカが愛国者法を見直す契機となったのは国民に事実を明かしたスノーデンのおかげであるわけで、その前にオバマ前大統領が「彼は愛国者ではない」と言ったのは間違いだ。
 僕はドキュメンタリーも映画芸術的な角度から批評することが多いが、映画としては些か味気ない本作については、内容の衝撃度や関係者の勇気だけを評価の対象としたい。日本人必見である。

この時だったかアメリカ当局が世界各国の首脳をも盗聴していることが判明した。ドイツやフランスは文句を言ったが、日本は何の抗議もしなかった。ああ、悲しき51番目の州かな。

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