映画評「フォレスト・ガンプ/一期一会」

☆☆☆☆(8点/10点満点中)
1994年アメリカ映画 監督ロバート・ゼメキス
ネタバレあり

17、8年前にアメリカに上司と一緒に出張した時の事、突然上司がこの映画について語り出し、3,4年前に観たにも拘らず詳細に至るまでよく憶えているのに感心させられた。僕など一日一善ならぬ一日一本以上観ている人間はなかなかこういう芸当ができない。それにしてもよく憶えていると驚いたものだ。この評判作が既に20年以上前の作品という事実に年月の経つ速さに気付かされ、また驚く。

1950年代初め、知能指数が低い上に背骨が曲がっている少年フォレスト・ガンプが、母親(サリー・フィールド)の懇願で一般の小学校に行って悪ガキたちに虐められた時に懸命に走ると、補助具が取れて物凄いスピードで走れることに気付く。その結果成長(トム・ハンクス)すると、スカウトされた大学でフットボールの名選手になり、素直な性格が幸いしてベトナム戦争で大活躍して勲章を貰う。小隊長(ゲイリー・シニーズ)を救出し、戦死した戦友との約束を守ったことから事業に思わぬ大成功を遂げ、資産家となる。愛する母親が死んだ後アメリカ中を走り回ると、聖人のように崇められる。彼はずっと思いを寄せて来た幼馴染のジェニー(ロビン・ライト)と再会するも、彼女は死病を患っていて彼との間にできた息子を残して死んでいく。

一見してアメリカの戦後史をスキャンする内容で、戦後が始まる1945年生まれの二人はアメリカの二つの要素の擬人化である。allcinemaの投稿者K氏の言うように、フォレストは陽のアメリカ、ジェニーは陰のアメリカである。
 知能が足りず虐められても、純粋で素直な性格が幸いして成功者となる。ジェニーは激動の50年代から70年代を生きるのに苦闘し、最後は死ぬ。病名は出されていないが、物故が1982年なので前年発見されたばかりのエイズだろう。彼女と並行して、ケネディー大統領以降の大統領や要人になされた暗殺や暗殺未遂事件、ジョン・レノンの暗殺までアメリカにおける負の要素を何気なく示している。レノンに関してはわざわざ「イギリスから来た若者」と表現して、アメリカでの出来事と強調する。
 しかし、見た目通り、フォレストのような人間が成功できる、アメリカという国のヒューマンな部分に温かい気持ちが湧いてくるということが本作を見終わり最初に出てくる大方の感想だろう。反面、アメリカを持ち上げるような内容でもあるので、日本人がかの国の民と同じ程度に感銘するのもどうかという思いがないでもない。

エリック・ロスの脚本は、空を舞う鳥の羽根を使うことによる開巻と幕切れの呼応、フォレストの補助具と小隊長の義足の相似、フォレストとジェニーの対照を上手く使って映画技術的にしっかりしていて、それをロバート・ゼメキスがきちんと映像に移している。封切時ウッディー・アレンの「カメレオンマン」(1983年)との類似が指摘された、実際のフィルムに主人公を紛れ込ませるVFX趣向が映画ならではのお楽しみ。声は吹き替えだが、映像のレベルが高く面白い。

個人的には、ベトナム戦争が始まると突然増え始める既成曲の使用がご機嫌。ほぼ全て知っている楽曲であるが、ご贔屓ドアーズの曲が4曲もかかるのでニコニコだった。その他、ベトナム戦争ものの定番になったCCR、ジミ・ヘンドリックス、ボブ・ディランなど。ただのBGMという以上に、ニルソン「うわさの男」やジャクソン・ブラウン「孤独なランナー」など内容と絡ませた使い方が多く頗る楽しい。

トランプ氏が日本の米産自動車の輸入が少ないといちゃもんを出したが、日本が国として米国自動車に輸入枠を設けているなんてことはないだろう。日本人が買うのに適していないだけ。まず買いたくなるものを作れ、だ。

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