映画評「ザ・ブリザード」

☆☆☆(6点/10点満点中)
2016アメリカ映画 監督クレイグ・ジレスピー
ネタバレあり

CGが進化しているので、近年、自然災害を扱った作品が多く作られるようになっている。本邦劇場公開されたものはさほどではないが、未公開を含めると枚挙にいとまがない程ある。
 本作は1952年にアメリカ北東部近海で実際に起きた台風下の救出劇を描いたものだが、荒れた海模様を再現することが眼目らしく、救出のサスペンスもドラマ性も意外に希薄で、特にTVで観るとそう面白く感じられない。

序盤は、弱気そうな沿岸警備隊隊員のクリス・パインと勝気そうな女性ホリデイ・グレインジャーのなり初めが描かれ、これにより彼の婚約者となるホリデイの視点が加わり、ドラマ的要素を増すことになる。物語の構成としては教科書通りというか定石通りという感じだが、まあないよりは良い。

マサチューセッツ沖に台風が接近、タンカーが遭難して二つに折れてしまう。乗組員たちは必死に生き延びようと意見を交わしながら作業を続け、後はやってくるかどうか分らない救出を待つのみとなる。隊員パインは一年前の救難失敗の汚名を返上しようと必要以上に力みかえって、無理を押して救出に向かう。

一番のドラマらしいポイントはこれで、漁業関係者には主人公に恨みを持っている者が少なくないし、主人公は主人公で忸怩たるものがあって、この心理的要素がお話を推進することになる。とは言っても扱いは本格的ではなく、ただの救出劇ではさすがに淡白すぎるのでちょっと味付けに使ったという感じに留まる。「ポセイドン・アドベンチャー」(1972年)の牧師のような面白味は到底出て来ない。
 婚約者の視点も型通りで、日本の「海猿」シリーズと大差がない。抑制されていてドラマとして品が良いだけにすぎぬ。

さらに、主眼と思われた救出は意外とあっさりと進み、TVが苦手とする暗い場面が多くて観ていて余り力が入らない。「TVで観るお前が悪い」と言われればその通りかもしれないが、だからこそ、どんな媒体で観ても手に汗を握ってしまう前述の「ポセイドン・アドベンチャー」や「タワーリング・インフェルノ」(1974年)がいかに巧くドラマと織り交ぜて作られていたか解るというものである。

かくして一番印象に残るのは、迫真にして迫力満点の荒れた海の模様で、冒頭で眼目と指摘したくなった所以。CGの出来栄えで映画を評するのは感心しないが、出来が悪いより良いほうが良いに決まっている。

ハイライト場面が暗いのは、意図的なのか偶然なのか、それが問題。しかし、CG映画にはこれが多すぎるじゃろ。

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