映画評「ナイトクローラー」

☆☆☆★(7点/10点満点中)
2014年アメリカ映画 監督ダン・ギルロイ
ネタバレあり

スポーツ賭博を扱ってなかなか興味深かった「トゥー・フォー・ザ・マネー」(2005年)を書いたダン・ギルロイが自らの脚本を映像化した監督デビュー作。

一時期日本でも流行った鉄くず泥棒のジェイク・ギレンホールが夜中に道を彷徨っていると、映像パパラッチの連中と出くわて俄然興味を覚え、食うや食わずの生活にオサラバしようと高級自転車を売って機材を買い、先輩パパラッチ(ビル・パクストン)から何気なく聞いた言葉を順守して撮った映像を視聴率低迷で苦しむTV局のディレクター、レネ・ルッソに売り込む。
 TV局の強くなる要求に応えるために次第に腕前を上げ、助手リズ・アーメッドを雇い、本格的になっていく。その為には非情に徹し、交通事故の現場では死体を動かし、強盗殺人の家では通報義務を無視して撮影、重体の先輩パパラッチを平然と撮り、強盗犯を知りながらも警察に情報を提供しなかった結果死傷者が出て警察から文句を言われても動じたりしない。強盗に撃たれて死にゆく相棒も無感動に撮る。その結果彼は実働メンバーを何人も雇う業界リーダーとなっていく。

という、道徳心に欠けた男のサクセス・ストーリーで、実際にアメリカで跋扈しているにちがいない映像パパラッチをテーマにした職業紹介編としての価値が高い。
 ストーリー展開・演出ともにハードボイルドに徹して凄みがあり、昨日の「アメリカン・ドリーマー 理想の代償」とラストが全く対照的。狙っても出来ないほどの対照ぶりと言うべきで、かの作品では実業者が検事に正義を以って目的に邁進する道を説き、こちらでは刑事に嘘をつく。類似の仕事であっても、(色々言う人もいるが)戦場ジャーナリストには頭が下がるが、大衆の覗き趣味をかき立てるだけのパパラッチには本当に腹が立つ。需要側たる大衆に(も)問題があるというのは、昔からの僕の主張だが。

反面、そういう人間が主人公であるからと言って、映画を酷評するのは筋違いで、優れた映画だから主人公の道徳心の欠如が際立つのである。これが文学や映画を評価する上での道理である。主人公が突然道徳心に目覚めたり、悲惨な最後を迎えたりする勧善懲悪的な展開としない態度が非凡なのである。

贅沢を言えば、主人公の生活感が乏しく、どの程度貧乏なのかという前提が無視された状態から始まるので、パパラッチの立場を描いた部分は断然優秀であっても、その基礎となるはずの純然たる私人としての部分が脆い為、芸術的な意味において完成度には疑問符が付く。しかし、初めての作品としては及第点どころか立派と言うべし。

アメリカン・ドリーマーならぬ、アメリカン・クローラーでした!

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