映画評「イントゥ・ザ・ウッズ」

☆☆☆★(7点/10点満点中)
2014年アメリカ映画 監督ロブ・マーシャル
ネタバレあり

1990年代以降ディズニー映画は過大評価されていると思ってきた当方としては辛うじて「アナと雪の女王」の少しひねくれた発想と歌曲の良さを買ったくらいだが、本作のひねくれ具合はおよそディズニーらしくなく素晴らしい。と言っても原作はブロードウェイ・ミュージカルらしいからディズニーの功績にはあらず。

中年にさしかかったパン屋の夫婦(ジェームズ・コーデン、エミリー・ブラント)は、その呪いをかけた魔女(メリル・ストリープ)から、次の三日間の満月のうちに、白い牝牛、赤い頭巾、黄色い毛髪、金色の靴を集めれば、呪いを解くことができて子供が授かると告げる。
 かくして夫婦が動き出したことから結果的に、少年ジャック(ダニエル・ハットルストーン)は巨人国に繋がる豆の木をもらい、赤ずきんちゃん(リラ・クロフォード)は狼(ジョニー・デップ)の腹から救出され、パン屋の実の妹ラプンツェル(マッケンジー・モージー)は弟王子と親しくなって誘拐した偽母の魔女(メリルです)に虐待され、シンデレラ(アナ・ケンドリック)は兄王子と結ばれる。

鬱蒼とした森を一つの舞台として有名な四つの童話の登場人物が交錯するという発想(そもそも伝承的童話は生まれたのが古い故に田園地帯を舞台にしているから、おおよそ無理のない発想である)に面白味があり、食い意地のはった赤ずきんちゃんなど登場人物の設定にややブラックさを感じさせながらも、前半のお話は一応原作やディズニー・アニメに沿っている。

が、本作の個性が発揮されるのはこれからで、夫々ハッピー・エンドになったかと思いきや、夫を失った巨人の妻が怒って地に降りてきたことからシンデレラの嫁いだ国は荒廃し、子は授かったものの妻を失ったパン屋、母と祖母を失った赤ずきんちゃん、やはり母(トレイシー・ウルマン)を失ったジャック、そして愛する王子が浮気者と知って別れたシンデレラという同病相哀れむ仲の四人が手を取り合って、巨大女をやっつける。
 本作で赤ずきんちゃんが指摘するように、何の罪もない大きいだけの人を倒すことは非人情的であり理不尽でさえあるが、本作の作者は人間の嫌な部分を色々と繰り出し、特に“自分の都合に合わなければ殺しても構わない”というこのエピソードでは後味の悪さを確信犯的に醸成している。結構真面目に戦争や民族差別の問題を風刺的に盛り込んでいるようで、厭世的な印象を残す。

どうもブロードウェイ・ミュージカルはオペラに準じてレシタティヴやそれに準じた歌曲が多いのでメロディアスなナンバーに余り出くわさず、その辺りもミュージカルとして受けにくい要素を内包している一方、押韻に腐心した歌詞は相当面白い。ミュージカル・ナンバーでは歌詞にも要注意だから、よく耳を澄まさなければならない。意味が分からなくても良いから音として聴く。そうした意味を含めてミュージカル映画を吹き替えで見るなんてのはナンセンスだ(本作には吹き替え版なしとの由。賢明なる判断と言うべし)。

監督ロブ・マーシャルの見せ方も流麗だが、世評は様々な点において固定観念に縛られ誠に良くない。

セリフを言うような歌い方をレシタティヴと言う。憶えておいてね。

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