映画評「HELP!四人はアイドル」

☆☆☆☆(8点/10点満点中)
1965年イギリス映画 監督リチャード・レスター
ネタバレあり

僕はビートルズ好きの映画ファンであるから、この作品は何回か観ている。何度も観ていると言いたいが、実際には五回目くらいである。先月NHK-BSが放映した「スパイダースの大進撃」という作品が本作の影響を多大に受けていると聞いたので録画、同作を観る前にご本尊を拝んでおくことにした次第。

ビートルズの映画出演第二弾で、第一作「ビートルズがやってくるヤァ!ヤァ!ヤァ!」でフォトジェニックな映像感覚でビートルズ・ファンは勿論映画ファンをも魅了したリチャード・レスターが引き続きメガフォンを取った。

インドの怪しい宗教の生贄が嵌める赤い宝石を付けた指輪を生贄となる女性から送られて嵌めていたリンゴ・スターが司祭とその一味に命を狙われるうちに、その指輪により世界征服を企もうと考えたマッド・サイエンティスト(ヴィクター・スピネッティ)のその子分にも追われ、ビートルズのメンバーこぞってアルプスに逃げた後、捜査を依頼したスコットランドヤード(ロンドン市警)に庇護される。かくして、新たな逃亡先カリブを舞台に、指輪を巡る三つ巴の争奪戦が繰り広げられることになる。

という誠に他愛ない冒険譚が「007」のパロディー気分で進行し、その狭間に「ヘルプ!」以下7曲の新曲が披露されるという仕組み。

前作に続いてミュージック・クリップの先駆けのような演奏場面が素晴らしく、アルプスを背景にした「涙の乗車券」Ticket to Rideはミュージック・クリップとして傑作と言うべし。

他愛ないと言ったものの、実はシュールな展開でシニカルな地口(洒落)や楽屋落ちも交え、少し後に始まる「モンティ・パイソン」に通ずる英国諧謔趣味があり、これを理解する人はビートルズ・ファンでなくても高く評価するはず。
 例えば、バッキンガム宮殿に匿われてそこで安いティーバッグが出される皮肉。創設メンバーのジョン・レノンとポール・マッカートニーとジョージ・ハリスンが、ピンチ・ヒッターだったリンゴに自分たちが迷惑を蒙るので指を切るように迫り、「代わりのドラマーはいる」と言うのは余りにシニカルだったりする。戦車が活躍する場面もナポレオン戦争と第二次大戦が一緒になったような景色で相当面白い。

楽曲についてはポップな素晴らしい作品ばかりで、一曲だけ既成曲「シーズ・ア・ウーマン」She's a Womanが地下壕の場面で、「ザ・ナイト・ビフォア」The Night Beforeに挟まって紹介されているのが印象的。「ハード・デイズ・ナイト」A Hard Day's Nightのシンフォニー版が「007」のパロディー曲と共に背景音楽として使われてもいる。

プロモーション・ビデオという概念が殆どなかった時代の作品だから、「プロモーション・ビデオに過ぎない」というのは誉め言葉になる。ビデオもパソコンもなく、いつでもどこでもご贔屓が観られる今とは時代が違うのだ。

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