映画評「くたばれ!ヤンキース」

☆☆☆☆(8点/10点満点中)
1958年アメリカ映画 監督スタンリー・ドーネン
ネタバレあり

1929年の「ブロードウェイ・メロディ」以降アメリカの有名なミュージカル映画は殆ど観ているが、この作品だけはなかなか観られなかった。夏頃「多分ないだろう」と図書館のライブラリーをチェックしたら何とVHSながら保有されていると判った。ところが、その後今や貴重な製品になりつつあるビデオデッキが不調に陥り、延期を余儀なくされる。ビデオを修復し、この度やっと40年の念願叶ってここに鑑賞に至る。

ヤンキースの名前があるように野球が画面に出てくるミュージカルで、何と元ネタはかの「ファウスト」である。

大リーグの弱小球団ワシントン・セネターズ(現在のミネソタ・ツインズ、テキサス・レンジャーズ両球団の前身)の熱烈な中年ファン、ロバート・シェイファーが強打者が欲しいなあと愚痴を言っていると、そこへメフィストフェレスに相当するレイ・ウォルストンが現れ、説得した末に彼を若返らせて(タブ・ハンター)、セネターズの監督の前に連れて行く。長打力に脱帽した監督は彼をいきなり1軍で起用すると、セネターズは連勝街道をまっしぐら。
 しかし、彼が契約を反故にして妻の許に戻ろうとするので、悪魔は色々と邪魔をし始める。その最強の刺客は魔女だった魅力たっぷりの中年増グウェン・ヴァードンだが、彼の妻への思いの前に敗退。彼女の反抗にもあって切羽詰まった悪魔氏は試合の途中に彼を元に戻すという禁じ手を使い、自ら墓穴を掘ってしまう。

ミュージカルにはお話を全く語る必要がないくらい他愛ないものが多いが、本作はなかなか面白い。主人公がシューレス・ジョーと仇名を付けられて野球選手たちが集団で踊る楽しいナンバーにもなっているのは「フィールド・オブ・ドリームス」にも出てくる“シューレス”・ジョー・ジャクソンへの表敬であろう。主人公に八百長の疑惑が掛けられるのも彼からの発想かもしれない。野球ファンならミュージカルとば別の部分で楽しめる要素と言える。

グウェン・ヴァードンはハリウッドが時々生み出す甘ったれた変な喋り方をするコメディエンヌとして魅力を発揮、若くなった主人公をよろめかせようと奮闘する場面での歌唱と踊りは秀逸で、終盤タブ・ハンターを交えて二人から集団ダンスへと進展していく酒場でのナンバーもMGMミュージカルにはなかったムードであり、面白さである。

大体日本にはミュージカル・ファンが少ないので、日本での評価という言い方もどうかと思うくらいなのであるが、それほど高くない。しかし、アメリカのミュージカル・ファンはこぞって絶賛している。その差がどこにあるのかと考えるに、恐らく、アメリカ人はグウェンのコメディエンヌとしての才能を堪能できるのに対し、日本人には33歳という実年齢以上に老けた印象のある、どちらかと言えば不美人に感じられる御面相のせいではなかろうか。
 かく言う僕もその類だが、コメディエンヌ、ミュージカル俳優としての才能は物凄いと思うのも確か。残念ながら彼女はこの後暫く出演作が途絶え、80年代になって本格的に復活して「コクーン」にも出演した。

作品のせいではないが、ビデオの画質が悪すぎて興醒めする部分があったのが惜しい。

松井が引退して大リーグ中継も見なくなったなあ。

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