映画評「瞬 またたき」

☆☆★(5点/10点満点中)
2010年アメリカ映画 監督・磯村一路
ネタバレあり

落ち着いたタッチにつき、ご贔屓とまでは言わないまでも好感を持っている磯村一路が監督をしているので観てみたが、見始めて早々後悔した。
 映画がひどかったからではない。四月に母を失った、自分の心情の中では殺したにも等しいと思っている僕が観るには余りに辛い内容だったからである。従って、最後まで観続けることができるか自信はなかったものの、体調の良い時に分割して観ることにし、やっと観終えることが出来た。

この作品のヒロイン北川景子は相乗りしていたオートバイの事故で恋人の岡田将生を失ったショックでその時の記憶を失い、すっかり治ったはずの足を引きずる程の精神的な傷を負う。そして、事故のあった現場は勿論そこに通じる橋を渡ることができない。
 この心境は非常に良く解る。父親の病気で一昨年暮れから母との行動が増え、入院した病院や施設へ何度も一緒に通い、買い物にも連れて行った。特に回数が多かった病院への道は今でも通るのが辛いし、店に行くのは嫌である。倒れる二日前にもその店に行った。こう書いているだけでも涙が出て来る。

閑話休題。

彼女はクリニックに通う女性民事弁護士・大塚寧々に無理矢理事故の真相を調べて貰いたいと頼むのだが、本作の一番弱いところがここである。
 同じクリニックに通うよしみでヒロインは頼むのであろうし、最終的に同情して弁護士も引き受ける。それだけでは弱いので、弁護士には妹に傷を負わせた過去と故郷を出たまま彼女に会っていないという罪悪感を持つ者同士同病相憐れむ心境というのを用意しているが、そもそもこれが弁護士がクリニックに通う理由として相当弱い。大塚女史の年齢から言っても原因の発生はかなり昔の話だろうし、それが原因でクリニックに通うほど長い間悩んでいては弁護士にもなれないのではないかという疑問が浮かぶ。弁護士になってから後年急に精神を病むというのも、このケースでは考えにくい。ヒロインの頼みも強引だが、映画の布石も相当強引である。

ともかく、お互いの交流を経て遂にヒロインは弁護士に連れられて現場に赴き、遂に事故当時の記憶を取り戻す。勿論弁護士の方も再生していく。
 ここは一種ミステリー的構成における謎が解ける段であるが、他に指摘されている方もいらっしゃるように、人間の本能・心理から言って凡そ考えにくい事故となっている。人間においては、事故を回避しようと考えるのが先であって、事故を起こるのを前提に恋人を守ろうとハンドルから手を放して背を向けるなんてことはしないであろう。そんなことで愛を表現するのは些か作り物めき、磯村監督らしいタッチも大きく乱れてしまう。が、見ている間はそれほど気にならない嘘と言えないこともない。
 
全体のタッチは叙情的で悪くないので、ちょっと甘目に採点しておきます。

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