映画評「クローバーフィールド/HAKAISHA」

☆☆☆★(7点/10点満点中)
2008年アメリカ映画 監督マット・リーヴズ
ネタバレあり

8年前に起きた9・11はアメリカ映画界に幾つかの傾向をもたらした。その中で異様に目立った【家族の再生】をテーマにした作品は最近漸く落ち着いてきたが、勿論テロそのものをテーマにした作品も年に数本作られる状態が続いている。事件をモチーフに寓話的に或いは暗喩的に作られた作品も少なくない。
 その意味で「宇宙戦争」に準ずる寓話SFだが、それでは余りに二番煎じなので、アイデアのみが目立って大して面白くなかった「ブレアウィッチ・プロジェクト」手法の導入により変化を付けたのが本作。二番煎じのお話を二番煎じのアイデアで作るだけでそれなりのオリジナリティを生むことができるという見本のような作品である。

マンハッタン、まだ若いのに副社長に昇進して(「ゴジラ」を生んだ)日本に派遣されることになった青年マイケル・スタール=デーヴィッドの送別パーティーで色々な人物が交錯するうちに突然地響きが起こり停電、屋上に出てみるとある高層ビルが火を吹いているのを目にし、これは大変と外に出ると今度は自由の女神の頭部が飛んでくる。飛ばしたのはゴジラもびっくりの正体不明の巨大な怪物らしい。

「らしい」という表現になるのはお話が小型カムコーダーを操作している主人公の友人T・J・ミラーの主観でずっと捉えられていて、この時点では体の一部が瞬時にしか映らないからである。これがSFX時代ならコストを下げる為の策略と憶測したくなるが、勿論VFXによりどうにもなる現在だから、目的が観客をじらすことにあるのは明らか。

マイケル君ら4人組が地下に逃れると今度は巨大昆虫のような謎の生物が襲ってくるが、噛まれた人はとんでもない悲劇が待っている。こうなると先日鑑賞した「ミスト」に似た感じだが、パーティーの席でマイケル君と喧嘩別れした恋人オデット・ユーストマンを救出する冒険的場面を挟んで遂には脱出用ヘリコプターに乗ったところで終らないのがいかにも昨今の作品らしい。怪物が生まれた原因は解らないが、解明は続編でやるといった興行的な理由もありそうだ。

長い間バブル状態が続いて暴騰してきたスタッフ・キャストのギャラを減少させるべくアメリカの映画会社がまず考えるのは一流監督に代わる新人や新進監督の起用。最近観るアメリカ映画の3本のうち2本は大して実績のない監督の作品である(これがハリウッド映画をつまらなくしている要因の一つ)。一方、配収に直結しやすいドル箱スターは使わざるを得ないが、時には本作のようにコストを抑える為にTV級の役者を使って一発アイデアに頼る作品が生まれ、ごくまれに成功する。

本作のアイデア自体は前述したように「ブレアウィッチ」の二番煎じで大したことはないものの、小型カメラによる視点というアイデアを生かすにほぼ不可欠な長回しはよく計算され、アイデア倒れの「ブレアウィッチ」とは比較にならない。録り残し部分や録画の狭間に上書きする前の映像が残っているというアイデアも明暗のコントラストを生み出し効果的。

ただ、行動心理学的には一介の素人にすぎない撮影者がずっと撮影を続ける心理に些か疑問が湧くところがある。それを言ってはお話が成立しないわけだが。

ゴジラもびっくりと言えば、ヤンキーズ松井選手が不調です。

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