映画評「エリザベス ゴールデン・エイジ」

☆☆☆☆(8点/10点満点中)
2007年イギリス映画 監督シェカール・カプール
ネタバレあり

「青ひげ」のモデルになったと言われるヘンリー8世から彼が二番目の妻アン・ブーリンに産ませたエリザベス1世にかけての英国歴史絵巻は人間の業がよく現れ、権謀術数が渦巻いて大変面白いので色々な映画が取り上げている。エリザベス1世が主役となるものではジーン・シモンズ主演の「悲恋の女王エリザベス」と10年ほど前に公開された「エリザベス」が代表的なところで、本作は後者の後日談を描く正統な続編であるが、こういう歴史ドラマの続編が10年近いスパンを経て作られるのは珍しい。

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男性との幸福を捨てて女王になったエリザベス(ケイト・ブランシェット)が、海賊問題で協力をしなかった為に、スペイン王フェリペ2世から宣戦布告され、1588年“アルマダの海戦”でスペインの無敵艦隊を退ける。

実際の戦いでは大した活躍をしなかった探検家・軍人サー・ウォルター・ローリーがエリザベスの恋心をくすぐる重要人物として登場してくるのは、本作では副次的な要素として扱われているものの直接の開戦原因となった【海賊問題】を実感を伴うように表現する為だろう。

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世界の海の覇権を巡って戦ったこの海戦で見えてくるのは、ヘンリー8世の離婚問題から始まる両国の宗教的対立。
 ご存知のように8世はアン・ブーリンの前の妻キャサリン・オブ・アラゴン(アラゴンはカスティーリャと共にスペインを構成する国)との離婚を巡ってバチカンと対立して英国国教を起こした経緯があり、カトリックの本山バチカンの理解では庶子に過ぎないエリザベスが女王であることが面白くないカトリック信者であるフェリペ2世がスコットランド女王メアリー・スチュワート(サマンサ・モートン)を利用して戦争を起こす、というのが見かけ上の図式である。

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その流れの中でエリザベスは従妹でもあるメアリーを暗殺企てのかどで処刑せざるを得なくなり、この辺りの苦悩も史実に沿って描かれるが、実際には【海賊問題】【宗教問題】などが複合して開戦に至ったと思えば間違いない。学校の教科書より解り易いですなあ。

それだけでは映画として物足りないというので扱われるのがエリザベスの人間性。彼女が独身を貫いた理由は、政略結婚が当たり前の時代における巧妙な戦略だったと推察されるのだが、映画ではその手の仮説に走らずに、結婚できない彼女が同じ名前を持つ侍女エリザベス・スロックモートン(アビー・コーニッシュ)を【代理の冒険者】として活躍させるのに反比例して本人の孤独が増していくという辺りを華麗な演出で積み重ねる箇所があり、個人的内面も多少は楽しめる構成になっている。

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スペクタクルとしての一番の見せ場は言うまでもなく“アルマダの海戦”での戦闘だが、意外と具体性を欠いてさほど感心しない。船団の大部分はCGと思われるが、その是非はともかく手に汗を握る前に終ってしまう感じである。大昔のラオール・ウォルシュ辺りならもっとダイナミックに捌くだろうとなんてことを言っても“ないものねだり”になってしまうが、この辺りに関して重量感より華麗なタッチが得意そうなシェカール・カプールは畑違いの感強し。

演技陣ではケイト・ブランシェットの迫力に尽きる。

ジョン・レノンが"I'm so tired"で「いまいましいサー・ウォルター・ローリーめ」と歌った理由が解りました。

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