映画評「キングダム/見えざる敵」

☆☆☆(6点/10点満点中)
2007年アメリカ映画 監督ピーター・バーグ
ネタバレあり

サウジアラビアにある石油会社の外国人居住地区で大がかりな自爆テロが発生して300名以上が死傷する。すぐさまFBI捜査官のジェイミー・フォックスに連絡が入り、犠牲者の中に同僚も含まれていたので現地調査を行いたいが問題が多い。この後暫くフォックスらの交渉場面が続いて、やがてサウジ警察同行という条件付きでの調査が可能になる。
 派遣されるメンバーはフォックス本人、クリス・クーパー、ジェニファー・ガーナー、ジェースン・ベイトマンという分析官4人という顔ぶれで、当初はサウジ警察が邪魔に入って仕事にならないものの、王室の理解を得た後は収穫が多く、アルカイダと繋がりのあるらしいアム・ハイザが主犯である確証を得るが、その直後人質に取られたベイトマンを救出に敵のアジトへ踏み込むことになる。

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本来国内業務専門のFBIが外国で仕事をするなどある意味荒唐無稽で、分析官なのに妙に腕が立つのも変だが、それを別にしても気に入らないことが多い。

一番問題なのが、ポール・グリーングラスの亜流みたいな、手持ち/肩掛けカメラによるふらふら映像と寄り気味かつ細切れのカット割りである。
 前者はセミ・ドキュメンタリー手法の作品に定着してしまったのでこの際我慢するとするが、細切れのカット割りは映画の体を成さないのだから認めることはできない。
 引きの映像を交えれば多少細切れ気味でも状況を把握しやすくなるが、本作も人気の「ボーン」シリーズ(グリーングラス作2本)同様寄ったままアングルを変えてばかりいるから何をやっているかよく解らないところばかり。一般論として最近のアクション映画は無益な格好良さばかり追って対象を正対視するという意識が薄く、話を綴る前提として対象をきちんと捉えるという映画の使命を果たせていないのである。但し、アクションの馬力に買いたいところはある。

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内容的にも9・11以降の映画としては一歩踏み込んでいることは評価するものの、敵味方含めて死ぬのはアラブ人ばかりで、乗り込んだFBIのメンバーが一人も死なないのは調子が良すぎて鼻白む。尤もサウジ警察は「メンバー全員を生かして返す」という誓いをしているから、彼らがちゃんと仕事をしたと表現することでアラブ人へ一応の敬意を示したつもりかもしれない。いずれにせよ、憎しみの連鎖という不毛を皮肉たっぷりに打ち出す幕切れも僕には帳尻合わせの印象が強い。

最近映画の世界でもCIAは不人気のようです。

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