映画評「白い巨塔」

☆☆☆☆★(9点/10点満点中)
1966年日本映画 監督・山本薩夫
ネタバレあり

山崎豊子の同名小説はこれまで5度映像化されているが、その最初の映像版である。他の4回はいずれもTVシリーズで、二度目のシリーズ化で本作主演の田宮二郎が同じ役に起用されたのを記憶している諸氏も多いだろう。2003年のTVシリーズも話題になったが、連続ものとは30年前に縁を切った僕は勿論観ていない。

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浪速大学医学部第一外科東(あずま)部長(東野英治郎)の来年3月の退任をもって教授職が空席になる。
 助教授の財前(田宮)の昇進が有力視される中、肝心の東は彼の傲慢不遜で自信過剰な人柄を嫌って、日本医学界の重鎮・船尾教授(滝沢修)を後ろ盾に金沢大学の菊川教授(船越英二)を推薦するが、菊川推薦に協調する第二外科の今津教授(下條正巳)の狙いは東教授退任後の勢力拡張。どちらも嫌う大学民主化グループは同大出身である第三の人物を用意する。
 大阪医師界幹部である戝前の義父(石山健二郎)は鵜飼医学部長(小沢栄太郎)を買収するが、いずれのグループも決定打を欠いたまま、激しい裏工作が繰り広げられる。

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社会派映画の第一人者・山本薩夫には力作が多いが、ある時点まで余りにもプロパガンダ的でエンタテインメント性を欠く弱点があった。。
 しかるに、本作は社会派と言ってもパワー・ゲームのスリルに満ち溢れ、手に握った汗が乾く暇もない程。日本映画には珍しいパーフェクト・ゲームと言うべし。

原作のおかげもあるのだろうが、構成の巧妙さに舌を巻く。権力争いの合間合間に戝前の自信過剰と尊大さが生む誤診問題を小出しに進行させ、教授選考問題が決着を見た後息をも付かせず、医療過誤裁判に入っていくのである。こちらもどちらへ転ぶとも予測が付かない際どい勝負で思わず前のめりになって観てしまう。特に選考問題でプライドを傷つけられた船尾教授を再登場させる辺りの鮮やかさは特筆したい。

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感情に走らず観照に徹した山本監督の態度も見事。医学界も象牙の塔も結局は権力か金或いはその両方を持つ人間が幅を利かせる欲望渦巻く薄汚い世界であることにぞっとさせられる。

白い虚塔。

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