映画評「茄子 アンダルシアの夏」

☆☆☆★(7点/10点満点中)
2003年日本映画 監督・高坂希太郎
ネタバレあり

自転車競技については無知に近く、一時期ツール・ド・フランスのTV放映があったくらいの知識しかないので全くの受け売りだが、日本のアニメ映画である本作が素材にしたブエルタ・ア・エスパーニャは同じように少なからぬステージで構成される都合3200kmの自転車ロードレース、とのこと。

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スペイン南部のアンダルシア地方、山岳地帯を直前に控えた平坦コースにはベルギーのパオパオビールに所属する主人公ぺぺの故郷があり、先頭を切る彼の脳裏に、出征している間に恋人カルメンを兄に取られた為に苦い思い出がフラッシュバックする。チームの方針でレーサーとしての見通しも暗い。その頃結婚式を終えたその二人は馴染の食堂でTVを観戦、ぺぺの優勝が現実味を帯びると一族はゴール地点に向けて車を走らせる。

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原作は黒田硫黄の短編コミック集「茄子」の一編、と言ってもこれまた全く知らない。脚本・監督を担当した高坂希太郎はスタジオジブリで作画監督もしたことのある新鋭だそうで、確かに絵がジブリ風だし、登場人物の描写も宮崎駿的である。

ステージレースの駆け引きとスピードを基本とした本作の狙いは、レースの間に苦悩の末に故郷を飛び出た主人公にいやがうえにも湧き上がる郷土愛、相互に切るに切れない家族愛を描き上げることで、中編らしくこじんまりと軽やかに纏められている。郷愁の象徴が茄子漬けというわけで、レースの行われる九月のアンダルシアは灼熱でレース模様も熱いが、我々の心の中を涼しい風が吹き抜ける。

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電源のアウトレットがきちんと欧州仕様になっていたり、TVに「アタックNo.1」が瞬間映ったり、レース解説者に専門の市川雅敏氏を起用したり、ディテールのそこはかとない拘りにも注目したい。

ついでながら、大昔小林旭の歌った「自動車ショー歌」の替え歌「自転車ショー歌」が忌野清志郎の歌で披露されている。オリジナルは60年代流行した駄洒落ソングの一つだが、全くご機嫌なナンバーと言うべし。

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