映画評「しゃべれども しゃべれども」

☆☆☆★(7点/10点満点中)
2007年日本映画 監督・平山秀幸
ネタバレあり

僕は現役の日本人監督の中で平山秀幸を最も評価している。とにかく何でも自分のものにして上手く撮る、今では希少価値になった職業監督である。「愛を乞うひと」は勿論、「学校の怪談」は実は秀作であるし、酷評が目立った「レディ・ジョーカー」も長い映画を観客が認めない困難な時代にあって僕は評価した。佐藤多佳子の同名小説を映画化した本作も実にうまい。

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東京、真打ちを目指す二つ目の落語家・国分太一が、茶の師匠である母・八千草薫の生徒・卜部房子から小学生の甥・森永悠希に落語を教えてくれと頼まれる。大阪弁をからかわれるので落語で人気者にしたいと言うのである。
 引き続いて、師匠・伊東四郎が講師を務めた話し方教室で知り合った美人・香里奈も「教えてくれ」とやって来る。つっけんどんな話し方から恋人に逃げられ友達もなかなかできないらしい。
 さらに、お話にならないほど下手な野球解説で顰蹙を買う松重豊も加わる。こちらは文字通りの口下手だ。

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教える主人公にしても落語は名人の域に程遠く、話し方は結構ぶっきらぼう、寧ろ生徒の香里奈に近いタイプ。この二人、実はお互いに気に入っているのに言い争ってばかりいる。二人の場合は厳密に言えば話し方ではなく自分に正直になれない性格の問題と言った方が宜しいようです。
 松重は勿論野球は上手く、嫌味なライバルの速球を打ちたい阪神ファンの森永君に打撃を教授する。しかし、世の中そんなに甘いもんやおまへんや、三振して落ち込み姿をくらます。彼を心配する他の三人。

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かくして、主人公を含め、各々の目標に向って奮闘する四人が互いに助け合い交流することにより人間として一皮向け他人との付き合い方を知る、というのがお話の骨子で、少年がライバルに素直に「ありがとう」と言う場面にテーマが集約されている。構図としてはありふれたものと言って良いが、落語を素材にしたところが新鮮。婉曲話法、半疑問形といった他人に甘える話し方が流行っている昨今、毅然とした話し方に注目するのも悪くないだろう。

場面は折り目正しく撮られ、展開は全く淀みなく実に見通しが良い。幕切れにおける香里奈の国分への駆け寄り方が全くぎこちなくて興醒めさせられた以外は誠に結構なお手前でございました。

映画初主演の国分太一も健闘の部類で、森永君は達者。

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