映画評「007/ロシアより愛をこめて」

☆☆☆☆★(9点/10点満点中)
1963年イギリス映画 監督テレンス・ヤング
ネタバレあり

シリーズ第2作は引き続いてテレンス・ヤングが監督、007ことジェームズ・ボンドには勿論ご贔屓ショーン・コネリーが扮する。黄金コンビと言って宜しい。因みに初公開時は「007/危機一発」の邦題で公開され、【発】は【髪】の間違いではないかと騒動になった。
 前作ではクレジットされなかったジョン・バリーが本作から主題歌を含めて全編担当することになり、シリーズ中最高の名曲と言うべき僕のカラオケ十八番「ロシアより愛をこめて」がオープニング・タイトルに被さる。但し、インストゥルメンタルでござって、マット・モンローの名唱はラストでやっと楽しめる。

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国際陰謀団スペクターの策士が英国とソ連のスパイを手玉に取る【漁夫の利】作戦を立てる。つまり、まず英国のスパイにソ連の暗号解読機を盗ませて両者間に悶着を引き起こしその隙に解読機を奪い、憎き007もやっつけてしまおうという算段なり。
 ソ連情報部で解読機を操っているタチアナ(ダニエラ・ビアンキ)が上司である課長、実はスペクターの幹部であるローザ(ロッテ・レーニャ)に命令され情報を渡す為にボンドに接近する。地図を受け取ったボンドは彼女の事務所を爆破して解読機を奪うとイスタンブールからオリエント急行に乗るが、同乗していた支局長(ペドロ・アルメンダリス)を何者かに殺され、指定の駅で落ち合った情報部員グラント(ロバート・ショー)に襲われる。彼はスペクターが派遣した偽物だ。

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以降、グラントとの死闘、トラック略奪作戦、快速ボートでの逃走、ホテルの掃除婦に偽装したローザの急襲・・・と見せ場が次々に繰り出される。
 人を食った本編前のエピソード、チェス名人たる策士が国際試合をさっと切り上げてスペクター本部に向う導入部の面白さ・・・。
 スパイ映画的なコンパクトな見せ場を畳み掛けることにおいて本作を凌ぐ作品はシリーズの中にはない。

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しかもスパイ映画の元祖たるヒッチコック的な場面と要素がいっぱいなのでご機嫌。
 「間諜最後の日」で見られた夫婦偽装、ヒッチ好みの金髪美女ダニエラ・ビアンキの起用、「北北西に進路を取れ」ばりの列車シークェンス、同じく「北北西」そっくりのヘリ襲撃からの逃走、二人の強力な殺し屋の存在、ソ連スパイの逃げ出す窓が「腰抜けアフリカ博士」の主演女優アニタ・エクバーグの口になっている視覚効果など。殺し屋の名前がグラントなのも気になる(笑)。
 オマージュなのか大真面目なパロディなのか解らないが、とにかく夫々が優秀で大変楽しめることに変わりない。

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大体このシリーズは「サンダーボール作戦」を代表として規模が大きくなるに反比例して大味でつまらなくなる傾向にあるが、本作はSF要素が全くなく誠にオーソドックス、それ故にスパイ映画としてタイトに楽しめるのだ。

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配役も満点で、ボンド・ガールに抜擢されたロシア美人ならぬイタリア美人ダニエラ・ビアンキの冷たさと妖艶さが同居する美しさ、ロバート・ショーとロッテ・レーニャの殺し屋ぶりに文句なし。シリーズ最高作である。

ご機嫌なのは観客。ヒッチコック本人はブスッとしたかもしれません。

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