映画評「ヘンダーソン夫人の贈り物」

☆☆☆☆(8点/10点満点中)
2005年イギリス映画 監督スティーヴン・フリアーズ
ネタバレあり

実話の映画化というと深刻ぶった傾向があるが、戦前から戦中にかけてのお話にもかかわらず楽しさのほうが目立つ、趣味の良い作品で、クラシックなタイトルからしてご機嫌でござる。

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1937年ロンドン、夫に先立たれたヘンダーソン夫人(ジュディ・デンチ)が遺産の使い道に困ってソーホーで売りに出されたウィンドミル劇場を買い取り、ユダヤ人のヴァンダム(ボブ・ホスキンズ)を支配人に雇ってミュージカル・レビューを始める。
 当初は賑わったものの周囲が真似を始めた為に興行が落ち込むと、彼女はヌード・レビューを思い立ち、審査官を同郷のよしみで抱き込んで「裸の女性は動かないこと」を条件に開演に漕ぎ着ける。

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長い王朝支配の歴史を持つ島国である英国とわが国は似ている部分が多いが、日本が【額縁ショー】を始める10年近く前に【額縁ショー】的なレビューがあったとは驚いた。多分日本人が真似したのであろう。しかし、戦争を挟んだこの10年は今の10年とは全く違うことは改めて言っておかねばならない。

自由の女神を模(かたど)るなどした泰西名画風ヌード演出が芸術的で美しくなかなか見事だが、ミュージカル・レビュー演目全体が昔のハリウッド映画にも匹敵する高いレベルで、それが幾つも見られるのがミュージカル・ファンにとって大収穫。
 それと同じくらい楽しいのが、上流階級としては実に開けた夫人と支配人の喧嘩友達的な関係とやりとりで、徐々に信頼関係を深めていく場面の積み重ねが素晴らしい。これが本作の真に描こうとしたことで、二人がダンスを踊る最終盤の場面は誠に味わい深い。

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第1次大戦で21歳で戦死した息子の墓参の場面では夫人の心理が深く沈潜、その戦死が彼女がヌード・レビューを始める遠因となったことが後で判明する構成も宜しく、開戦後は些かしんみりとするが、ヒロインの人間的魅力に支えられて秀作となっている。扮するジュディ・デンチの演技の見事さについては言わずもがな。

邦題は偉大なる(意図的な)誤訳であります。

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