映画評「ホテル・ハイビスカス」

☆☆☆★(7点/10点満点中)
2002年日本映画 監督・中江祐司
ネタバレあり

中江裕司は「ナビィの恋」のミュージカル仕立てにびっくりしたものの、結局それ以来観ていなかったのだが、本作はちょっと気になっていた。

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沖縄、米軍基地の近くに建てられた汚いホテル・ハイビスカス。ホテルとは名ばかりで、部屋室は僅かに一室という家族経営だが、その家族がまた変わっている。
 母親(余貴美子)が恐らく軍人との間に設けた長男(ネスミス)は黒人とのハーフ、長女(亀島奈津樹)は白人とのハーフ。
 我らが主人公である二女・美恵子君(蔵下穂波)は、ホテルの一室でビリヤード場を経営している沖縄人の父親(照屋政雄)との間に出来た子供で、現在小学校三年生。お山の大将よろしく二人の少年を従えて木の精であるキジムナーを探す冒険を繰り返すうちに、米軍基地へ入ってしまう。中で猫を天国に送る儀式をしているおばあを発見するが、後日訪ねてみると跡形もなくなっている。
 その時知り合った黒人士官ジョージ・キング・ジュニアの名前がどうにもキジムナーに聞こえてしまう美恵子君。実はこの士官は長男の父親でありました。

夏休みに母親と姉さんが父親のいるアメリカに繰り出すと、普段は観客が閉口するほど元気いっぱいの美恵子君も大いに寂しがる。
 子供らしい感情の起伏と言えばそれまでで、米国から母親の手紙が届くや今度はそれを出稼ぎに出ていた父親に届けにバスに乗り込む健気さもあります。知らない人たちとも天真爛漫に接触、あるおじさんを通してキジムナーと遭遇することに成功する。父親はすれ違いに帰っていたが収穫のある旅で、お盆では死んだ父親の妹とも遭遇、霊の存在を信じるようになる。
 そして、間もなく大好きな母と姉が元気に帰ってくるのを迎える美恵子君でありました。

仲宗根みいこのコミックの映画化で、とにかく主人公の少女の元気溌剌さと積極性に中年おやじは腰を抜かすばかりだった。あの異常なハイ・テンションは例外中の例外だし、沖縄ならではの風物も多いが、彼女たちの冒険は、特に地方出身の人間にとっては、親しみが湧くに違いない。

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その中で影を落とすのが沖縄の基地問題。しかし、中江は少女の放つ強烈な光の後ろで埋没させるかのように底流でこの問題を扱い、猫を祀っていたおばあ(の住処)が消えてしまったり、兄弟の肌の色が違って、母娘がアメリカへ渡ったり、アメリカから父親が来たりする形で表されている。

しかし、一般の観客である僕らはそれらは密かに胸に収め、少女のひと夏の冒険を楽しむのが良いだろう。

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