映画評「戦争と人間 第三部(完結編)」

☆☆☆★(7点/10点満点中)
1973年日本映画 監督・山本薩夫
ネタバレあり

いよいよ、トータル9時間を超える超大作の第三部、完結編である。

昭和12(1937)年、盧溝橋事件により始まった日中戦争が激化、抗日統一戦線の八路軍にすら大苦戦しているのに、懲りない関東軍は満州とモンゴルとの国境ノモンハン地区でソ連軍と交戦して、敵の巨大戦力の前に壊滅的打撃を受ける。
 軍人・民間人を問わず戦闘回避を主張する者は非国民とされ、彼らの忠告を軍上層部が聞き入れず、戦いにおける精神力を過信したが為の惨敗である。日中戦争、対ソ戦略で行き詰った日本は太平洋戦争へと引きずり込まれることになる。

画像

伍代家では、長女・由紀子(浅丘ルリ子)が銀行家(加藤嘉)の御曹司と政略結婚し、次女・順子(吉永小百合)は対照的に、次男・俊介(北大路欣也)の親友・標耕平(山本圭)と極秘に結婚するが、反国家的という理由で投獄された夫はそのまま出征し、俊介もまた同じ経緯で特権を剥奪されて満州で戦うことになる。

画像

完結編は、平和主義的な立場を貫いて上官から苦しめられる耕平と、戦争に疑問を抱きながら射撃手としての任務を全うする俊介が全編に渡って描かれる。
 この二人の苦闘を観ながら心にひっかかってくるのは、反国家的・非愛国的とは何かということである。国を滅ぼすことが愛国的なのか、国家の基礎たる国民一人を無視することが国家的というのか。こうした矛盾を引き起こすのが戦争である。いざ始まれば多様な考え方を阻み、引き返すことが難しいのが戦争なのである。
 現在の日本では一応思想の自由が保障されているが、永遠に保証されているものではない。イラク派遣に反対する集会に参加した人たちなどが自衛隊によって調査されていたという先日のニュースにはぞっとしないではいられなかった。作者たちが映画に込めた筈の、昭和前半のような時代の再び来ないようにという願いはよく伝わってくる。

画像

ただ、【死の商人】としてのし上がっていく伍代産業の社長二人が途中からぱったりと消えてしまう点がバランス的に物足りず、五味川純平原作の旧作「人間の条件」と似ている場面が多いのは不満である。耕平の初年兵訓練の場面に至ってはほぼそのまま。原作者の五味川が梶上等兵の人物像を耕平と俊介二人に分けて展開したかったのは理解できるが。

不満が多い後半ではあるが、最終盤の戦闘場面では大量に戦車を繰り出し、スペクタクルとして見ごたえ十分。

"映画評「戦争と人間 第三部(完結編)」" へのコメントを書く

お名前
ホームページアドレス
コメント