映画評「戦争と人間 第一部」

☆☆☆☆(8点/10点満点中)
1970年日本映画 監督・山本薩夫
ネタバレあり

「人間の条件」で知られる五味川純平の大作の映画化第一部で、「運命の序曲」という副題が付いている。当時、原作は継続中だった。
 現在鑑賞中なので書きにくいところがあるが、昔の鑑賞メモをベースにざっと書いてみる。

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内容より先に言わねばならないのは、60年代終わりにスターシステムが崩れ、既に五大映画会社協定も意味を失っていた時代故に、製作した日活を中心に今では考えられない豪華な顔触れ。これぞ本当のオールスターキャストと言うべし。

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テーマは日本国がいかに破滅的に太平洋戦争に突入していったか。架空の財閥である伍代産業に関係する人々の行動を通して群像劇的に描いている。
 第一部は、左翼活動家一斉取締りの3・15事件、山東出兵、張作霖爆殺事件が起きた昭和3(1928)年から、昭和6(1931)年初頭、つまり満州事変の起こる直前まで。

度重なる恐慌でのし上がった伍代産業の当主(滝沢修)、満州支社社長をするその弟(芦田伸介)、当主の4人の子供たち、即ちブルジョワ的タイプの長男・英介(高橋悦史)と長女・由紀子(浅丘ルリ子)、労働者の苦しみを第二部で気づかされる次男(中村勘九郎)と次女等の一族や、満州では中国人に同情的な満州生まれの日本人医師二人(加藤剛、田村高広)や妻(松原千恵子)を抗日匪賊に拉致されて失う通商人(高橋幸治)、関東軍の暴走の中外交努力をする外交官(石原裕次郎)、由紀子と関係のある特務機関軍人(高橋英樹)、伍代産業の為に麻薬売買に暗躍する男(三国連太郎)など、無数の人々が登場する。

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腹蔵なく言えば日本の近代・現代史に疎い人間には解りにくいところがないわけでもないが、民間レベルの視点から語られる昭和初めの日本史は教科書で読むよりずっと興味深く多彩である。それに満州・朝鮮人の描写を加えて、アングルはかなり広い。結果的にこの第一部がバランスが取れ、最も優秀な出来となっていた。

その他の主だった出演者は、二谷英明、山本学、岸田今日子、栗原小巻、丹波哲郎、江原真二郎、地井武男、水戸光子。第二部は女優陣がもっと豪華になる。お楽しみに。

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