映画評「春の雪」

☆☆★(5点/10点満点中)
2005年日本映画 監督・行定勲
ネタバレあり

三島由起夫の最後の小説「豊饒の海」第一部を行定勲が映像化した文芸大作。インディ風作品から始まった行定監督もすっかり文芸大作路線に転じてしまいましたな。

大正の初め、松枝侯爵(榎木孝明)の息子・清顕(妻夫木聡)は、綾倉伯爵(石丸謙二郎)の娘で二才年上の幼馴染・聡子(竹内結子)を愛しているにも拘わらず、わざと行けずな態度を取りお茶を濁している間に聡子の宮家の洞院宮治典王(及川光博)との婚約が決まってしまう。逃がした魚は大きいと思ったのか追いかけ回すが、堕胎の為に京都へ下った聡子に出家され、逢えないまま肺炎で二十歳で夭逝する。

という物語で、恐らく原作では主人公の心理がもっと解るのではないかと思うが、映画ではとんと解らない。多くの人が感じるだろうが、馬鹿な男にしか見えず、同情の代わりに「何をやってんだか」と苦笑するしかないのでは大いに困る。
 それが本作を評価する決め手となってしまい、行定の演出を考えるところまで行かない。

台湾から撮影監督として李屏賓(リー・ピンビン)を招聘してクラシックな時代色を醸成しているのは結構だが、俳優の風采と口跡が現代的すぎてムードを壊している。

崇徳院の名歌「瀬をはやみ岩にせかるる滝川のわれても末にあはんとぞ思ふ」はなかなか上手く使われているが。

歌合せ 崇徳院の 古き歌に 宇多田ヒカルの 新しき歌とは

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