映画評「眠狂四郎無頼剣」

☆☆☆★(7点/10点満点中)
1966年日本映画 監督・三隅研次
ネタバレあり

シリーズ第8作。三隅研次監督のシリーズにおける三度目にして最後の演出作である。

大塩平八郎(=忠斎)の乱の1年後くらい、油屋の弥彦屋と一文字屋に起った強盗事件を密偵のような小鉄(工藤堅太郎)が親分の眠狂四郎(市川雷蔵)に語る、というのが発端。

この作は脚本がいつもの星川清司から時代劇のベテラン・伊藤大輔に替わっているのだが、出だしからミステリー趣味でなかなか宜しい。

狂四郎が歩いていると、父と共に処刑された平八郎の息子・格之介と相次いで間違えられる。一組は平八郎の残党ながら油に火をつけ江戸八百八町を焼き尽くし老中・水野忠邦を暗殺しようと企む愛染(天知茂)一味であり、もう一人は勝美(藤村志保)という原油生産地・越後出身の娘。彼女は弥彦屋と一文字屋の為に格之介を裏切ったという罪悪感に苛まれ、罪なき町民を救おうとする狂四郎に協力することになる。

伊藤大輔自身の本意は知らないが、ハードボイルド小説の時代劇版を目指したのではないかという感じがする。本格探偵小説的な趣向も豊富で、文字を逆に読んで誘拐された勝美の居場所を当てたり、蜂起の日時を推理したりするなどなかなか面白い。しかし、勝美との関係において狂四郎はハードボイルド小説の私立探偵的な匂いがするのである。星川脚本作と違って狂四郎の虚無的な感じは抑え気味。

三隅監督の演出はいつもほどはクロースアップが目立たず些か地味な感じがあるが、終盤狂四郎が全裸の勝美の為に布団から布(きれ)を見事に斬り取り、それを彼女が寝転んで巻き付けるショット、そのまま川に飛び降りると再び全裸になって布が後から落ちて来る、というショット(の連続)は大変面白い。

画像

忍者屋敷的な仕組みも楽しかったが、相手の愛染が同じく円月殺法の使い手というのが新手の趣向で、円月使い手同士の決闘に痺れた。

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