映画評「カラーパープル」

☆☆☆☆(8点/10点満点中)
1985年アメリカ映画 監督スティーヴン・スピルバーグ
ネタバレあり

Imdbなどの評価点を見ると地元アメリカでは「シンドラーのリスト」が断然評価が高いが、僕は本作がスティーヴン・スピルバーグの一般ドラマの中では一番優れていると思う。結局一般の映画ファンは賞レースの結果にかなり影響されてしまうのである。

1909年、14歳の黒人少女セリーは父親との間に出来た二人の子供と引き裂かれた後、妹ネティ(アコスア・バシア)を貰いに来た黒人青年(ダニー・グローヴァー)に押付けられ、40年もの間下女のようにこき使われながらやがて家を出、死んだ父親の遺産を元に仕立て屋を開業する。

一人の女性の自我の目覚めを描いた物語は、大正末期から昭和20年の終戦にかけて下女のように差別され忍耐を強いられるヒロインを描いた邦画「異母兄弟」を思い出させる。
 ヒロインの境遇に関しては瓜二つと言えるほどだが、義理の息子の嫁(オブラ・ウィンフリー)の波乱の人生を通して人種差別問題を差し込み、引き裂かれた妹への40年に及ぶ思慕の情を底流に据えている。
 「異母兄弟」の主(あるじ)もスノッブを絵に描いたような封建主義的軍人で相当怪しからんが、本作でヒロインに関わる男性は人間として言葉を失うほど下劣な人物ばかりである。彼らを見て義憤に駆られない人は少ないであろう。

さて、スピルバーグの展開は非常に滑らかで巧さを意識させないところが実に巧い。しかし、セリーが卑劣な夫に隠されていた妹の手紙を大量に発見して様々な場所で読みふける場面では技術の封印を解いたかのように怒涛のカットバックを構成、圧巻である。
 アフリカに布教に出ている妹からの手紙を読んでいるセリーが振り向くとアフリカのサバンナが現れ、雨漏りがバケツをたたく音が現地のドラムの音になり、セリーの剃刀を砥ぐ腕の動きが現地の儀式とオーヴァーラップする、といった風に畳み掛けて進行するのである。
 有無を言わせない圧倒的なテクニックの披露であるが、目立たない部分の演出こそもっと注目されなければならないと敢えて強調しておきたい。

このカットバックの後は血縁の断ちがたい絆を描き、紫の花の広がる野に人情の花も開く。

成人後のセリーを演じたウーピー・ゴールドバーグは本作で一気にスターダムに駆け上がる。

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