映画評「男はつらいよ 寅次郎サラダ記念日」

☆☆☆★(7点/10点満点中)
1988年日本映画 監督・山田洋次
ネタバレあり

「男はつらいよ」シリーズは第1作を除いてテーマ【映画 あ行】から省きましたので、テーマ【山田洋次】にて検索をお願い致します。

シリーズ第40作。昭和最後の「寅さん」である。

小諸駅で老女(鈴木光枝)に付き合う羽目になった寅さんは、翌朝重病の老女を迎えにやってきた病院の美人女医・真知子(三田佳子)と知り合う。勿論悪い気がしないので、彼女の家にお邪魔するが、そこに東京の姪・由紀(三田寛子)が合流。早稲田の1年生ということで、受験で悩んでいる満男に早速「早稲田に入れ」と電話を入れる始末である。

彼女の専攻が国文学、現在短歌の勉強中という設定で、当時ベストセラーになった俵万智の歌集「サラダ記念日」から幾つかの歌がアレンジされて紹介されている。

寅さんは満男の為に早稲田大学見学に出かけ、彼女を待つ為に産業革命関連の授業に加わって「寅次郎頑張れ!」のワット君の話をしたりするのだが、実は本作のテーマの一つである「人は何故勉強をするのか」ということを彼なりに考え、後にそれを問うた満男に「自分の道を自分の力で決める為だ」と答える。名答なり。
 後で彼が早めに小諸の家を発つ時にこれと似た言葉を使って「自分のような学のないものは駄目だ」ということを逆説的に説諭しているのが極めて印象的である。

両輪の片方を成すと言うべきもう一つのテーマは「老いを見つめること」で、夫の死後一人で家を守ることに固執する老女に胸に迫る。彼女が車の中から自宅を見つめる場面が涙腺をひどく刺激した。
 今回解説の山本晋也も触れていたが、御前様の耳が遠くなったことをさくらが顔を近づけて話すことで表現したのが実に巧みで、テーマである「老い」をきちんとまとめている。

大学と病院にロケをした効果も少なからず、全体としてもさりげなく上手く作られた佳作である。

折角なので僕も一首。
寅次郎 いとも賢く なりにけり 過ぎる女性(にょしょう)の 数重ねし間に

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