映画評「山羊座のもとに」

☆☆★(5点/10点満点中)
1949年イギリス映画 監督アルフレッド・ヒッチコック
ネタバレあり

アルフレッド・ヒッチコック第35作。
 第36作の「舞台恐怖症」と同じく英国で撮った作品だが、どちらも日本での劇場公開はなし。

僕が全く知らないヘレン・シンプスンの小説を舞台化したものを脚色した時代メロドラマで、舞台は1830年代のオーストラリアはシドニーである。
 勿論英国からの独立前で、総督が統治しているわけだが、その甥マイケル・ワイルディングが一旗上げたいとアイルランドからやってきて、土地成金ジョゼフ・コットンと話を進める。この成功者は今は妻となっているイングリッド・バーグマンの兄を殺した罪で7年間服役して現在の地位を築いたのだが、召使マーガレット・レイトンにあらぬ噂を吹き込まれ、結果的にワイルディングを傷つけ、再犯故に死刑を免れなくなったところで、イングリッドが兄殺害事件の真相を告白。夫婦にはジレンマとなる秘密だが、ここに至って映画はやっと面白くなる。

ヒッチコック自身が認めているように、イングリッドの為の映画であり、ヒロイン映画であるが、彼女が出る迄十数分を要し、そこまではオーストラリアが英国の流刑地であった歴史的事実が確認されるくらいで誠に退屈。
 彼女が出てきても酒に酔っているという設定で見栄えが宜しくなく、以降ノイローゼ、立ち直り、再びノイローゼとアル中という変化に富んだ大芝居を展開するが、大味で全く冴えない。ヒッチコックの長廻しに耐えられなくなった彼女は本当にノイローゼ気味だったらしく、その辺が画面に現れているのかもしれない。

「レベッカ」の亜流ゴシック・メロドラマということもあり、登場人物の中で一番面白いのはやはり下心のある召使で、「オセロ」のイアーゴを思わせる嫉妬の吹込み役を演じ極めて印象的だった。しかし、幕切れは凡庸に推移する。

さらに、今回観たDVDは移動するたびに色ずれを起こすので非常に不愉快、モノクロに着色した映画かと思ったほどだが、調べてみるとテクニカラーで撮られているのでマスターテープのひどさが原因らしい。
 そんな不愉快さも手伝い、現時点では、50本観たヒッチコック作品の中で最も気に入らない作品と言わざるを得ない。

また何故か昔から流布している邦題は誤訳。原題は「南回帰線にて」といった程度の意味で、オーストラリアを指している。

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