映画評「海猫 umineko」

☆☆☆(6点/10点満点中)
2004年日本映画 監督・森田芳光
ネタバレあり

「(ハル)」以降好調が続いていた森田芳光監督としては不満が残る出来栄え。  
 「模倣犯」は評判に反して悪くない作品だと思うが、本作に寄せる不評にはある程度納得できる部分も少なくないのである。因みに、谷村志穂の原作については何も知らない。

北海道、若い娘・美輝(ミムラ)が17年前に<事故>で死んだ母親の過去を理由に突然婚約解消され、祖母(三田佳子)に真相を問い質す、というのが発端。
 20年前、彼女の母・薫(伊東美咲)は南茅部の漁師・邦一(佐藤浩市)に嫁ぐが、生まれつき乗り物に弱く漁師の生活にも馴染めず、無骨な兄とは対照的にナイーブで内省的な弟・広次(中村トオル)に惹かれ、長女・美輝を儲けた後、一度だけ関係を持つ。
 この時次女・美哉を儲けるが、弟との関係が邦一にばれて追いつめられた挙句に崖から飛び降りて死に、広次もその場で後を追う。

ポルノを別にすると、不倫を扱うドラマに不倫そのものを主題にした映画は余りない。トリュフォーの「隣の女」のように人間の原罪に迫るか、溝口健二の「近松物語」のように純愛を強調することになる。どちらの場合も悲劇で終るケースが殆どである。
 本作は純愛型だろうが、些か浮ついた台詞や古典的すぎる設定が気になり、文芸ドラマにもメロドラマにもなりきれていない。脚本の筒井ともみがどちらを狙ったのか分かり難いが、余りに古典的な設定なので封建時代を舞台にした時代劇にでもすべきではなかったかと思わせてしまうのは大きな弱点だ。

森田監督=筒井脚本コンビの旧作「失楽園」は意外なほどがっちりと作られていて、原作と映画により生まれたとも言われる不倫ブームは作品の主題を見抜けない愚か者の仕業と思ったものだが、あの作品の純度の高さに比べると本作は大分見劣りがする。
 丘から海を眺め絵について語るうちに二人が互いに共感を覚える場面は、二人の心情がよく伝わり、なかなか良い。
 しかし、それ以外が弱く、ヒロインのロシア人の血、広次が教会にイコンを時々見に行っていることなど、上手く使えば面白くなりそうな材料には事欠かないのに実際は上手く機能していない。
 また、函館と南茅部の地理的関係を巧く利用すれば、メロドラマ・ムードがもっと強く醸成されたかもしれぬ。

アイドル女優主演故に濡れ場が中途半端というのも確かで、なくても描けることを考えれば省いたほうが正解だったろう。

但し、話が現在に戻ってから胸に迫るものがある。人間が生きていくこと自体に悲哀を感じてしまうのである。

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