映画評「驟雨」

☆☆☆★(7点/10点満点中)
1956年日本映画 監督・成瀬巳喜男
ネタバレあり

小説「暖流」で有名な小説家・劇作家の岸田国士の戯曲を成瀬巳喜男が映画化した。

倦怠期に入ったサラリーマン夫婦(佐野周二、原節子)が、新婚旅行から帰るや否や夫と喧嘩して飛び出した姪(香川京子)に泣き付かれ、隣に越してきた若い夫婦(小林桂樹、根岸明美)の様子を眺めているうちに、夫君の会社のリストラ方針などもあり、徐々に息苦しくなっていく。

成瀬監督は小市民を描くことが多いだけに派手さに欠け、平凡に見えるかもしれないが、人物を環境に溶け込ませて心理を浮かび上がらせるのが抜群に巧い。同時に「めし」「浮雲」など倦怠は成瀬得意のテーマであり、この作品はその部分で彼向きのお話であるが、実は余りに心理中心で環境に重きを置いていないので、実力発揮とまでは行かない。

しかし、水木洋子(脚本)は夫婦間の交情の機微を巧く捉え、他の秀作同様心理の起伏の描き方が正確なのに感心させられる。
 特に、前の晩激しい口論を繰り広げた夫婦が翌朝、子供に拾ってほしいと頼まれた紙風船を一見無邪気に叩き合う幕切れで、互いの人生、即ちこれからの夫婦人生を鼓舞しあう姿を象徴させている辺りに、ちょっと苦みの混じった仄々とした味わいがある。同じような環境にある現在の夫婦にも感じ入るものがあるだろう。

"映画評「驟雨」" へのコメントを書く

お名前
ホームページアドレス
コメント