映画評「北の零年」

☆☆★(5点/10点満点中)
2005年日本映画 監督・行定勲
ネタバレあり

「GO」でスター監督の仲間入りをし、「ロックンロール・ミシン」ではインディ風のままだったが、「世界の中心で、愛をさけぶ」でメジャー系に転じた行定勲が放つ近代歴史ドラマの大作である。

明治四年、淡路島の稲田家の人々が、主君との軋轢を回避しようとした明治政府により殆ど未開であった北海道中南部の静内への移住を強制され、刀の代わりに鍬や鋤を手にし開墾に励むが土地が悪く遅々として進まない。そこで中心的人物の渡辺謙が農業を学ぶ為に開拓地を後にするが、その後杳として行方が知れず、後を追いかけた妻・吉永小百合と娘は雪に前後不覚となる。
 ここまでが第一部と言うべき物語だが、全体から眺めると現象を横並びに繋ぎ合わせただけという印象が強い。

5年後、遭難時に米国人らしき白人に救助された母娘は牧場経営に精を出し開拓部落民の尊敬を集めるに至るが、育てていた馬を勃発した西南戦争へ駆り出されかかる。
 その徴用の責任者が何と姓を変えた渡辺謙その人である、というのだから些か作り事めいている。基本は実話に基づいていると聞くが、これは脚本家・那須真知子女史の創造であろう。
 そして、開拓民と馬の抵抗に遭った彼は退却するしかなく、ここに開拓民たちは初めて心を一つにするのである。

170分という長さは久しぶりの歴史大作というにふさわしいが、意外と腰がない。ヒロインとその他の人物の交流に、吉永主演作品で言えば「おはん」のような、強いエモーションが殆ど感じられないのである。夫の渡辺謙もつまらないし、彼の不在の間彼女を精神的に支えるアイヌ人に偽装した日本人・豊川悦司もさっと流れていく。吉永小百合のみが映画を支えている印象だ。

難儀を伝えられた撮影も存外絵づらが面白くなく平板な印象がある。特に大作で重要なロングショットに迫力を欠き、映像に関して言えば、同じ時代を描いた「ラスト・サムライ」に及ばない。

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