映画評「悪い奴ほどよく眠る」

☆☆☆☆★(9点/10点満点中)
1960年日本映画 監督・黒澤明
ネタバレあり

黒澤明通算第18作、戦後第14作。黒澤プロ第1作でもある。

建築公団副総裁(森雅之)の娘(香川京子)と建築会社の社員(三船敏郎)との結婚式が行われ、それを観ながら記者連中がきな臭い話をする。ウェディング・ケーキは何と数年前にその建設を巡り自殺者を出したビルの格好をしていたが、警察が公団と会社の癒着を洗って進行するに連れて自殺する者が出てくる。

非常に複雑な話なのでこれ以上は詳述しないが、端的に記すと副総裁の娘婿が自殺者の息子で、副総裁関係者に復讐する機会を狙っていたことが判明。それに気付いた副総裁は娘を利用して娘婿を車に缶詰にして殺し事故死に見せかけ、翌日記者に向って「惜しい婿を亡くした」と言う。

黒澤明60年代の第1作だが、結局60年代にはたった5本しか作れなかった。TVの普及で映画産業が斜陽化、黒澤自身に大作が多くなったせいもあるが、66年から69年の間一本も新作が発表できなかったのは実に惜しまれる。

いずれにしても、がっちり作り上げられた社会派サスペンスで、見ごたえ充分。終盤に漂う巨悪の不気味さに呆然、観終わって暫く声も出ない。最近耳目を騒がせている耐震強度偽装事件を念頭に置きながら観ても面白いかもしれない。

黒澤明、小国英雄、久板栄二郎、菊島隆三、橋本忍という当代最高レベルにあった5人の脚本家が協力して作った脚本は完成度が高く、出入りの多い人物関係も交通整理が行き届き、解りにくい部分がない。当方も大分大人になり、四半世紀前に初めて見た時よりぐっと楽しめた。

タイトルも秀逸で、「悪い奴ほど手が白い」(1967年イタリア映画)といった模倣タイトルも生まれている。

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