映画評「戒厳令」

☆☆☆☆(8点/10点満点中)
1973年日本映画 監督・吉田喜重
ネタバレあり

吉田喜重は作風が難解な上に、一般的に右翼思想家と理解されている北一輝の思想など禄に知らない僕には実に難解と言わざるを得ないが、映画として圧倒された。

分かりにくいが、お話は3部に分かれている。
 最初は財閥である安田銀行頭取を刺殺して自決した青年の血染めの衣服が姉の手により北に渡り、それを持って北が銀行へ行くまで。彼の著作をバイブルとして仰ぐ一人の青年がテロ計画を実行できなかったことを謝りに来る一幕、そして226事件の顛末である。

この間に天皇を中心として国を改造するという彼の革命論が広く深く浸透する様子がうまく暗示されている。モノクロ時代の吉田作品は音楽も台詞もあるが、極めてサイレント的である。この作品の緊張感は「裁かるるジャンヌ」に近いものがある。あの映画のような凝視感とは多少違うが、前衛的な一柳慧の音楽と相まって空気を凝視している印象が醸成されている。演出、撮影、音楽がアンサンブルとなって独自の緊迫感を生み出しているわけである。

思想的に淡白な僕には思想として到底理解できていないし、北の思想も理解しようとは思わない。映画として美しくあれば良い。

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