映画評「妻として女として」

☆☆☆★(7点/10点満点中)
1961年日本映画 監督・成瀬巳喜男
ネタバレあり

成瀬巳喜男の作品としては問題があるのかもしれないが、個人的には大いに楽しんだ。

序盤は大学講師・森雅之一家の幸福な家庭の情景が描かれるが、映画はこの家庭の偽りを暴いていく形で進行し、最後は似ても似つかぬ終わり方をする。
 この一家が銀座のスナックを任せているママの高峰秀子が徐々に映画の中心人物に推移し、実は彼女は戦前から20年もの間森の愛人であり、一家の子供として育てられている長女・星由里子と長男も二人の子供であることが判ってくる。彼の妻・淡島千影が結婚前に子供の産めない体になっていたからということであるが、ママが店を譲ってほしいと夫婦に要求したことから微妙なバランスにあった持ち合い関係が瓦解していく。
 全ての要求をはね付けられたママが息子に真相をばらしたからで、子供たちはどちらにも付かずに大人たちに反抗していく。

結局誰も満足できない形で映画は終わるのだが、妻と愛人が対峙する場面などは正に通俗映画である。しかし、この作品の魅力はその通俗的な味にあるのではないかという気がする。がっちりした演技陣に支えられた通俗味と言って良い。そして通俗的ながらも成瀬の視線が誰に肩入れすることなく客観的に留まっているからこそ、面白味になるのであろう。

"映画評「妻として女として」" へのコメントを書く

お名前
ホームページアドレス
コメント