映画評「乱れ雲」

☆☆☆☆(8点/10点満点中)
1967年日本映画 監督・成瀬巳喜男
ネタバレあり

成瀬巳喜男の遺作となったラブ・ロマンス。

エリート官僚の夫を交通事故で失った司葉子は加害者の立場となった貿易会社社員・加山雄三を激しく憎む。
 彼は裁判で無罪になるが慰謝料を払い続け、青森に転勤になると旅館を経営する青森の実家に戻っていた彼女を訪問する。やがて誠実な彼に彼女もよろめくが、被害者と加害者の立場は二人を結びつけることを許さない。

50年代は林芙美子の映画化を軸に皮肉な視点で男女の愛を見つめることが多かった成瀬は、「乱れる」で純粋な愛情というものに目を向け始めたらしい。「乱れる」は義理の姉と弟という関係のせいで純然たるロマンスにはできなかったが、こちらは王道的な物語になっている。また「乱れる」ではタッチが前半と後半とで首尾一貫しない印象があったのに対し、こちらは開巻早々に夫が死ぬという設定にしたことで序盤から焦点が合い、気持ちよく見続けることができた。野球で言えば、直球一本という感じである。

司も加山も美男美女で、のびのびとした自然な演技を披露している。適材適所の好演と言うべし。
 また、これだけの作品をものしながら間もなく63歳で成瀬は亡くなった。惜しい哉。

"映画評「乱れ雲」" へのコメントを書く

お名前
ホームページアドレス
コメント