映画評「乱れる」

☆☆☆(6点/10点満点中)
1964年日本映画 監督・成瀬巳喜男
ネタバレあり

松山善三の脚本を晩年の成瀬巳喜男が映画化したメロドラマ。

高峰秀子は嫁ぎ先の酒店を夫の戦死後も18年間に渡り孤軍奮闘して経営してきたが、スーパーの進出で経営が厳しくなっている。何やら訳ありでぐうたらな生活を送っている末弟・加山雄三は姉の夫と協力してスーパーを起こそうとするが、優柔不断な母はともかく二人の姉など周囲は長年尽くしてきた嫁を外そうとする。義姉を思慕する彼はそれが面白くなく、思わず姉に愛を告白、家を出て里帰りを決意した姉の後を追う。

そして思いもかけない事故が起こる。つまり途中下車して立ち寄った温泉街で弟は酔って墜落死してしまうのである。正確には【事故】なのか【自殺】なのかは判らないのだが、【事故】としたほうが落ち着きが良い。但し、これは限りなく自殺に近い【事故】であり、その遠因は彼の家族にあるというちょっとした皮肉も見える。

ただ作り方には疑問がある。途中までは時代をリアルに切り取っていたのが、60分を過ぎた辺りで恋愛映画的にムードががらりと変わるので当惑してしまうのである。勿論夫々が連関しているのでそうマイナスになるわけではないが、かくも水と油みたいに分けて描くとしっくり来ない恨みがあることは否定できない。

配役陣では、加山雄三もなかなか努力して好演の部類だが、高峰秀子が断然素晴らしく、彼女を堪能すべき映画と言って良い。脚本の松山も監督の成瀬も彼女をよく知っている映画人だけに、彼女を演じることを前提にヒロインの人物像が作られているのである。

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