映画評「銀座化粧」

☆☆☆★(7点/10点満点中)
1951年日本映画 監督・成瀬巳喜男
ネタバレあり

風俗映画とも言える一種の女性映画。
 成瀬巳喜男の作品としては東宝(PCL)移籍第1作の「乙女ごころ三人姉妹」に近い風俗劇であるが、ヒロインの扱いは現実的で悲劇性を強調した前述作とは大分違う。

中年に差し掛かった一人の女性・田中絹代が、贔屓客だった昔の情人との間に設けた男児を育てながら銀座のバーに勤め、ひっそりとしたたかに生きていくというだけのお話だが、現在も腐れ縁の続く情人との交流、妹・香川京子との心の触れ合い、マダムの為に金策に奮闘する挿話、行方不明になった息子を探す場面を通して彼女の性格と心境が描かれている。

何気ないエピソードの数々だが、夫々に捨てがたい魅力がある。その中で同僚・花井蘭子の知り合いである若者・堀雄二が巡り巡ってたった一日で妹の結婚相手になってしまう一連のシークェンスは凡庸のようで秀逸であるが、その直前ヒロインが田舎出身者である彼を連れて街を歩く紹介する場面が当時の銀座風俗を巧く点出している。

島崎藤村の藤村を【ふじむら】と読ませるお笑いなど、成瀬作品には珍しくコミカルな扱いも多い。総じて魅力に溢れる一編と言うべし。

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